第10話 求められても
「どう思う、って……」
付き合うな、って言ったら西澤先輩のことをフるのか。
付き合えば、って言ったら二人は付き合うのか。
多くの友達がいる中、そんな大切なことを俺に聞く実梨は何を考えているんだろう。
どうしてまっすぐな視線を俺の瞳に向けるんだろう。
でも、誰かにその質問をするってことは先輩のことを好きではない可能性が高い。
だって、もし実梨が先輩のことを好きだったらその場でOKするはずだから。それでも付き合うか迷っているということは、俺に何か言ってほしいのかもしれない。
わからない。どう答えることが正解なんだろう。
実梨は俺に何を求めてるんだろう。
色々と聞きたいことはあるけど、まずは迷う理由を聞いた。
「なんで迷ってるの?」
「初めて会ったのは1年の秋くらいだったの。そんなに話してなかったけど、私が落ち込んでいるといつも声をかけてくれた。陸上の都大会で選抜メンバーに入れなかった時とか、ちょっとしたことで不安になった時とか、いつも、誰よりもすぐに気づいてくれる。気分転換に食事も誘ってくれる。いつも支えてくれている人で感謝してるの。だから告白を断るのも申し訳ない気がして」
先輩のことを好きではないけど、日ごろから感謝している人だから告白を断ったら今までの関係が崩れると考えている。それが嫌だから困っているんだ。
でも、それだけ支えられていたなら先輩は実梨のことを大切にしてくれると思う。俺みたいな臆病者が隣にいたら悲しませるだけだ。
「ごめん。困るよね。傘、ありがとう。じゃあね」俺の手から離れる。
「実梨」今度は俺が実梨の裾を掴んだ。
手ではなく、裾に触れた。
「いいんじゃない」
「え?」
「付き合ってみなよ」
意外と、すんなり言うことができた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます