第5話 6人めの告白
放課後、河田さんと科学実験室に足を踏み入れた。もう清掃が済んでいたのか誰もいない。
「話って?」
告白されることを知っていながら、知らないふりをして聞く俺は痛々しい。
背中を向けていた河田さんは黒髪のポニーテールを揺らしてこちらに振り向いた。
「私、澤田君のことが好き。今年の体育祭、リレーで転んだ私に肩を貸してくれた時に惹かれたんだと思う。でも、澤田君は私のこと何も知らないと思うから友達から始めてくれませんか?」
友達から始めようと言われたのは初めてだ。真っすぐな視線に嘘はないから、引き込まれてしまい思わず息をのむ。
「友達でも、嫌かな」泣きそうな声で視線を落とした。
「ごめん。実は誰にも言ったことないけど、好きな人がいる。ずっと前から好きな人」
気まずくて視線を下に向けていたけど、河田さんは俺のことをどんな顔で見てるのか気になった。俺に好きな人がいたことが驚きだったのか。それとも目を合わせずに気持ちを伝える俺に失望しているのか。実際、どちらでもなかった。
「もしかして、実梨ちゃんのこと?」
河田さんの顔を見ると、知っているようだった。
どうして気づかれた? 毎年行われる体育祭も、文化祭も、修学旅行だって、楽しそうに友達といる実梨を誰にも気づかれないように遠くから見守っていた。ずっとそうだった。実梨に話しかけたことはないのに、どうして……。
「覚えてない? 私と話していた時、実梨ちゃんのこと見てたじゃない」
……あ。
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