第4話 バスケ部の河田さん
幼馴染である俺たちの家は隣同士に位置する。親同士、仲が良いから平日休日問わずによく顔を合わせていて、そのたびに実梨と遊んでいた。
小学校に入ってからだから10年以上は経っている。あの頃から俺は読書家だった。誰かに声をかけられても無視して本の世界に入り込んでいたけど、実梨はぐいぐい話しかけて邪魔するから本を読む手を止めるしかない。
しかし何があったのか、高校に入ってからは顔を合わせてくれなくなった。中学までは目が合えば笑顔で声をかけてくれていたのに、今やたまたま電車内で見かけて目があっても、俺を無視して友達と話を続ける。
高校2年生になってやっと同じクラスになっても話しかけてこない。9月に席替えをしてから3か月間、こんなに席が近いのに目も合わない。いや、合わせようとしない。
多くの人に笑顔を見せる太陽のような実梨は、俺に影を向けている。
「はぁ」
教室に、誰にも聞こえないくらいのため息が漏れる。読書をやめて頬杖をつき、校庭を眺め始めると、先ほど俺に告白しようか迷って教室のドアの近くで友達と相談をしていた女の子が声をかけてくれた。まさか、知っている人だとは思わなかった。
「澤田君。私のこと、覚えてる?」
小さい丸顔に少し切れ長の大きな瞳、そして女子の平均身長よりも少し高く姿勢のいい体型はバスケ部を想像させる。実際、バスケ部に所属していたはずだ。
今年の体育祭でこの子を__河田さんのことを手当てしたことをきっかけに知り合った。
体育祭当日、保健委員の俺は各部ごとに怪我人の手当をする仕事を担うことになり、学年別女子選抜リレーを担当した。本番、あと少しでゴールのところで転んだ女子がいて、その子が河田さんだった。すぐにかけより、本部まで肩を貸して手当をした記憶がある。
「覚えてるよ。河田さんだよな。どうしたの?」
「放課後、時間ある? よかったら少しだけ話したいなって……」
目の前にいる実梨に聞かれていると思うから気まずい。でも断る理由はなかった。
「うん。いいよ」
告白をされるのは、この子で6人目だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます