第3話 俺は恋愛対象外
高校生活2回目の12月は最高だった。
9月に席替えをして以降、窓側の一番後ろという絶好の位置に座っている。今は冬の季節だけど、布ベストとブレザーを着用していてもどこか寒い。よく見ると教室のドアが開いているから足元に鳥肌が立っていた。だからここで日差しを浴びながら趣味の読書に集中することで寒さを紛らわそうとする。
しかし落ち着いて読書することができない。なぜかって視線を感じるからだ。
「はやく告白してきなよ」
「でも澤田君、今読書中だし……」
「そんなのいつものこと。他の女子だって普通に告白してたよ」
他クラスから来た女子2人が俺の話をしている。あの子たちが、ここの教室のドアを開けっぱなしにして冷たい風をいれこんでいる原因だ。
俺は高校に入ってから初めて愛の告白をされるようになった。その数は5人。自分で言うのもなんだけど、俺は容姿が良いみたいだから自然と女子の視線を集める。しかしそんな俺に見向きもしない女子はいた。
その人は俺の幼馴染で、丁度目の前の席に座っている。触らなくてもわかるほど柔らかい茶髪は、ぎりぎり1本で結わえるくらいに伸びている。
「え!? 香織、彼氏できたの?」
石川実梨は友達の新木香織さんと恋バナをしていた。
いつもは何かたわいない話をしているのに珍しく恋愛の話をしだすから、読書をしながらも聞く耳を立てた。
どうも新木さんには他校の彼氏ができたみたいだ。実梨は羨ましそうに新木さんに付き合うまでの経緯を質問攻めしている。
すると不意に、新木さんは俺の名前を口にした。
「澤田君は興味ないの? 女の子に人気じゃない」
「んー、澤田君は、ないかな」
俺が真後ろにいることをわかっていたからか小さな声で話していたけど丸聞こえだった。
胸の奥がチクチクする。本の内容が頭に入ってこない。俺が恋愛対象外なことにも傷ついたけど、それよりも学校では俺のことを苗字で呼んでいたことにも驚いた。
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