第12話

家族の時間が増えた。

夫と子供たちが互いにおしゃべりをする光景が増えた。


そのうち夫は台所で10年ぶりにご飯を作るようになった。

土日になると、色々な食材を嬉しそうに買ってきては奇天烈な料理を作る。

マテ貝がにょーーんと入った味噌汁とか。


わたしはほんとに文字通りおえーーーとなんどももどしそうになった。

こどもたちは、しーーんとなって、「ごちそうさま、おなかいっぱい。」という。


それでも懲りずに仕事帰りに週末が近づくとスーツのまま重いアタッシュケースとレジ袋いっぱい抱えて帰ってくるようになった。料理の腕も上がってきた。

パンを作ったり、クリスマスには丸どりを(これは毎年)焼いてくれた。


料理の話をはじめよく夫と家族がしゃべるようになった。


子どもたちのまえで以前半分冗談半分本気で夫に向かって、

「ぱぱはままのことタンスか本棚みたいにしか思ってない。

テレビを眺めている時間の方が100倍多い」といってわらった。


そしたら子供たちが「そんなことないよ。

パパはご飯をつくったら、まずママの反応をすごく伺ってるよ。

ままがまずそうにするとしゅんとするよ。帰ってきたときもおかえりって言ってもらえた日はうれしそうだよ」という。


「ぱぱは、毎日働いてばっかりで、しあわせなんかな、、、、」とふときいたとき


「だいじょうぶ、なっちゃんがいるから」

といった。







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