第10話 防衛隊へ
空は暗く、月が出始めてきた。
僕はあれから5時間泣き続けた。
寒さなんてもう感じない。
まだ出会って1日なのに……。
こんなにも別れが辛いなんて……。
「もう時間だ。悲しいのは分かるが、
もう今日は終わりだ。
マリーにはお疲れ様と言っといてくれ」
コウテイペンギンが僕の目の前で言ってきた。
「え……。
マリーはペンギン防衛隊止めるんですか?」
「隊長からクビが宣告された」
「クビって……。どうしてですか?」
「子供1匹守れない奴に何が出来るんだ!!」
そうだ。メリーの死を1番悲しんでいるのは
マリーに決まっている。
子供を目の前で失って……。
「あの……ペンギン防衛隊に入りたいです」
「来週入団試験があるから受かったら入れるよ」
入団試験。嫌な予感がする。
「内容は?」
「ペーパーテスト60分だ。50点中35点あれば合格だ」
ペーパーテスト。嫌な思い出がよぎる。
僕が人間だったころ、不正をしたことを……。
トランス村の小学校は6歳から小学校に3年間通うことが決められている。
動物変化の儀式がないところでは6年間小学校に通って3年間中学校に通うことが義務付けられているらしいがそれを知ったのは小学校を卒業してからだった。
具体的に言うと、3年間小学校に通った後、1年間動物変化の儀式の準備をする時間が設けられている。まあ僕はその期間で遊んだけど……。
9年間の義務教育を3年間でやるため、ハードで雑な部分が多い。
学期の途中に中間テスト、学期の終わりに期末テストがあるけど、
範囲が広すぎて赤点を取る人が毎年たくさんいるらしい。
僕の学年には僕を含めて5人しかいなかった。
偏差値が60もある
このクラス唯一の女性の
運動神経が抜群の
読書が大好きな
僕たちがいつもくだらない話で盛り上がっていた。
2年生の秋の期末テストで僕は不正をしてしまった。
「おい、石川。次の期末テストで賭けようぜ」
大塚が僕の席の近くまで来て賭けを挑んできた。そもそも僕と大塚には天と地の差ぐらいある。僕が勝てるはずがない。
「負けたら……神田に告る」
僕は神田のことは好きではなかった。
ただ神田は僕のことを好きなことはこのクラスのみんなが知っている周知の事実だ。
つまり、僕が告れば……100%OKが出るだろう。好きじゃないのに付き合ってもいいのか。
罪悪感が頭の中をよぎった。
「何が見たいの?僕が負けて……」
「神田からの命令だ」
神田からの命令?
「どういうことだよ!!」
「昨日、お前抜きで王様ゲームをやって……。
神田が女王になって俺にこの賭けを命令したんだ……」
「それって……」
「神田はお前を何をしてでも自分のものにしようとしてるんだよ」
そんなに執着心が強いなんて……。
「でも……勝てないよ。お前には」
「俺に作戦がある」
その作戦がテスト中に大塚が答案用紙を落とすからその間に答えを見るというカンニングだった。心のどこかではこんなものやってはいけない。そう思っていたのに、神田が怖すぎて……。仕方なくやってしまった。
その結果、僕は5点差で大塚に勝つことが出来、
それ以来、神田が僕にアプローチをかけることはなくなった。
僕にはペーパーテストは向いてない。
「何考えてるの?」
その声は……。目の前にいたのはサリーだった。サリーは確かペンギン防衛隊の見習いだったはずだ。
「サリー、僕にペンギン防衛隊のペーパーテストについていろいろと教えてください」
サリーは笑顔でうなずいた。
一方、トランス村から新たに動物変化の儀式に旅立つものがいた。
大塚空。彼はずっと空を飛ぶことに憧れていた。
「俺は、海を飛ぶカモメになりたい」
大塚はナンキョクオオトウゾクカモメになっていた。カイトと名乗って。
ペンギンになった主人公石川剛。
その天敵になった大塚空。
ペンギン防衛隊に入って守ることが出来るのか?
ペンギンの村にもうすぐ大事件が起こる。
今日、俺はライオンとして死んでいく 緑のキツネ @midori-myfriend
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