第8話 緊急事態
教室にはマゼランペンギンがたくさんいた。
誰に話しかければ良いんだろう?
まずは近くにいたオスのペンギンに話しかけた。
「はじめまして。転校生のモーリーです」
「おお。はじめまして。俺はニシキ。
よろしくな」
「友達作りたいから紹介してくれる?」
「良いよ。付いてきて」
この教室はなんだか不思議だ。
オスが右側に。メスが左側に集まっているのだから。
「この集まりは何なの?」
「あれはクラスのプリンスとプリンセスだよ」
クラスのプリンス?プリンセス?
そんなものがいるなんて。
ニシキがメスのグループの中に入り込んだ。
僕も慌ててついて行くことにした。
「おい、ガリア。転校生だって!!」
「転校生?はじめまして」
「はじめまして……。
僕の名前はモーリーです」
「俺はガリア。よろしくな」
顔つきが整っていてすごくかっこいい。
オスの僕でも何となく分かる気がする。
これはモテるな。良いなあ。
メスの中から抜けてオスの方に向かった。
「あっちにいるのがプリンセスのアクア」
アクア……。顔つきが小さくて美しく可愛い。
「一目惚れした?」
一目惚れ。
そもそも僕には恋が何かよく分かっていなかった。トランス村には女が極端に少なく、会う機会も無かった。恋って何なんだろう。
僕を好きになる動物なんて……。この世にいない。
「いや……。そもそも恋って何なの?」
「お前、恋を知らねぇのかよ。
恋ってその人を見るだけで
胸がドキドキすることだよ」
「別に何も無かったなあ」
「マジかよ。お前、すごいな。
俺なんて3回は告白したぜ。全部失敗したけど」
「アクアに?」
「うん」
笑いそうになったけど、ぐっとこらえた。
もし笑ってしまったら、友達ができなくなる。
「授業始めるよ!!」
先生っぽいコウテイペンギンが中に入ってきた。みんなが一斉に席に戻った。
「今日から転校生が来ています。自己紹介を」
「いや。大丈夫です。もう溶け込めてるんで」
「そうですか。授業始めます。
今日は天敵についてです」
天敵について先生が語り始めた。
そんな事は知ってるよ。全部図鑑で読んだし……。朝早かったからかなあ。
突然睡魔が襲ってきた。
まあまだ授業も終わりそうに無いし……。
ペンギンは寝る時間が短いからバレないよね……。そう信じながら僕は目を瞑った。
しかし、それが悪夢の始まりだった。
目が覚めるとクラスには誰もいない。
ピロリンピロリン
ただ警報だけが鳴り響く。
また天敵が来たの?どこに?
窓を見た瞬間、僕は死を覚悟した。
そこに10匹のナンキョクオオウゾクカモメがいた。
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