第7話 学校
ジリリリ ジリリリ
ペンギンの形をした目覚まし時計がかまくら中に鳴り響いた。マリーとメリーが起き始めたのがうっすら見えた。夜、立ったまま寝るとマリーに言われた時はびっくりしたけど、意外と目を瞑るだけで眠ることができた。
自分も起きないといけないのか。
なんか寝た気があまりしない。
そう思いながら外に出てみると空は
まだ真っ暗だった。
「もう朝なの?」
「ペンギンの睡眠時間は3時間で充分なの」
「さあ、準備して学校に行くのよ」
マリーに言われて僕は鞄に筆記用具とノートを入れてメリーと一緒に家を出た。
「気をつけてね」
その声がずっと聞こえてくる。
やっぱり心配なのかな。
マリーに出会ってまだ1日しか経ってないのに。
こんなに僕のことを心配してくれるのは
マゼランペンギンの性質なのかな……。
『マゼランペンギンは、ペンギン全種の中でもカップルの絆が強く、愛情深い』
図鑑の内容を思い出しながらメリーについて行った。
「名前モーリーだっけ?
何で急に昨日現れたの?」
その本当の答えを言いたい気持ちはあるけど……。言ってしまえば、
また振り出しに戻るような気がした。
「お母さんに捨てられて……」
嘘ってこんなにも難しいものか。
僕は生まれて1度も嘘をついた事が無かった。
それどころか嘘がバレるのが僕のダメな所。
顔や行動に出たりしてしまう。
「そうなのか……」
意外にもメリーはすぐに引き下がってくれた。
良かった。
「マリーから聞いたけど……。昔、人間からペンギンになった人がいるらしいよ」
その言葉を聞いた瞬間、目が回りそうになった。やばい……。もしバレてしまったらあの夢が現実になってしまう。
「そうなんだ……」
冷や汗が全身からこぼれ落ちる。
お願い。見逃してくれ。
神様に願うしかなかった。
「まあ良いや。もう着くよ」
何とかこの場を乗り切れた。
でも学校らしい建物は見つからない。
見えるのは大きな氷の城だけだ。
「どこが学校なの?」
「あれだよ!!」
右の翼で指差したのは大きな城だった。
「学校って城なの?」
「うん」
あまりのスケールの大きさに言葉が出なかった。何でこんなものが南極にあるのか?
どう見ても人間が作ったしか考えられない。
「受け付けは自分でやってね」
それだけ言ってメリーは学校の中に入った。
でも何をすれば良いんだ?
「何してるんですか?」
僕の2倍大きいコウテイペンギンが入り口にいた。その大きさに圧倒されてしまった。
「受け付けは……どこですか?」
声を震わせながら質問した。
「受け付けは自分がしてます。
名前と学年をお願いします」
「名前はモーリーです。学年は……1年です」
マリーから昨日、1年生からよろしくと言われた。この学校に何年生まであるか知らないけど……。まあマリーの言葉を信じよう。
「クラスは1年3組です」
「分かりました」
僕は教室へと向かった。
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