第6話 天敵

「ここだよ」


ついに辿り着いたペンギンの街。

そこは僕の想像とはかけ離れていた。

僕は何もない氷河の上で暮らしていると思っていた。でも、この街には氷でできた遊園地や公園、大きな城もあった。結構発展しているんだなあ。

人間が作ったのかな……。

そう感心しながらマリーについて行った。

マリーの家はどんな感じだろう?

あの城がマリーの家なのかな?

目の前にペンギンしか入れないような小さいゲートがあった。


「ここから入って」


「このゲートは何なの?」


「天敵から身を守るためだよ」


天敵?ペンギンの天敵って何だっけ?

僕がゲートを通り抜けた瞬間、


ピロリンピロリン


街のスピーカーから警報が鳴り響いた。

マリーは僕の目を両方の翼で隠しながら抱っこした。


「何があったの?」


「この警報は天敵が来た合図なの……」


「天敵?なんで目を隠すの」


「あなたが見ればトラウマになってしまうかもしれない。私はそういうペンギンを何匹も見てきた。私が守るから……大丈夫だよ」


マリーが僕を守てくれるの?

目が見えないため、何が起きているか分からない。そもそも僕は何に襲われているんだよ。

僕は図鑑の内容を思い出した。


『ペンギンの天敵はナンキョクオオウゾクカモメ、シャチ、ヒョウアザラシなどです』


「村長、誰がやって来たんですか?」


マリーと村長の会話が聞こえてきた。


「見ろ、あれを……」


「あれは……ナンキョクオオウゾクカモメ」


僕も1度は見てみたいものだけど、目がふさがれている僕は何もできなかった。


「マリー、その子供は?」


「さっき、拾いました。

この子をお願いします」


「分かった。お前の家に連れて行く。

気をつけろよ」


「はい」


村長は僕を抱っこしながら最高スピードで走り始めた。

マリーは?死なないよね?


「村長?マリーは何で逃げないの?」


目が見えない中、村長に聞いてみた。


「あいつはペンギン防衛隊なんだ。

天敵が来れば追い払いに行く。

それがあいつの仕事なんだ……。

そんな事より急ぐぞ。ここは危険だ」


マリーの安否が心配だけど、待ってるからね。

村長は僕の目を隠しながらずっと走り続けてくれた。


「着いたよ」


そう言われて目が開けると空は真っ暗だった。

まだ目が開いていないのか?不思議に思ったくらい暗闇が広がっていた。目の前に1軒の小さな雪でできたかまくらがあった。


「ありがとうございます」


振り返って村長を見て気付いた。

村長はコウテイペンギンだと。

要するにこの村にはいろんな種族のペンギンが

住んでいる街なんだ。


「マリーは?どうなったんですか?」


「マリーも帰っているよ。ほら?」


「モーリー。お帰り」


「何で?マリーの方が早いの?」


「村長はいつも方向音痴なんだから……。

さあおいで。モーリー」


マリーは立ち上がり村長のもとに向かった。


「村長、ありがとう」


その時、マリーの翼に傷がついていることに気づいた。いつその傷がついたか分からないが、

マリーのペンギン防衛隊がいるから

この世界は守られているんだな。

そう考えると感慨深く感じた。


「君、誰?」


突然、高い声が聞こえた。

え?マリーって子供いるの?

周りを見渡すと机の下に隠れていた。


「僕はモーリー。君は?」


「私はメリー。何しに来たの?」


「ここで過ごすことになったの」


「そうか……。まあ良いけど」


マリーが村長と話終わり、帰ってきた。


「さあ、夜ご飯にしましょう」


夜ご飯はアジの天ぷらだった。

こんなもの食べるのか!!

少し驚いたが、食べてみると美味しかった。


「明日からモーリー君は学校に行ってね」


「いきなり学校!?」


「もう申し込んだから。メリー、よろしくね」


「分かった」


明日からいよいよ学校が始まる。

どんな生活が待っているのか?

期待に胸を躍らせていたが、僕たちを待ち受けていたのは残酷な毎日だった。

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