第3話 食事会
声のする方へ向かって行った。
コロン
何かが落ちた音がした。なんの音だろう?
音がした方に向かうとそこには
ボロボロの神社があった。
5円玉が僕の目の前に転がってきた。
音の正体はこれだったのか……。
それにしても
こんなところに神社があったなんて……。
この村に住んでもうすぐ10年が経つのに……。
こんな場所があると知らなかった。
「ようこそ。トランス神社へ」
女の声が神社の中から聞こえてきた。
その瞬間、鳥肌が一気に立った。
夜の神社で女の声。絶対幽霊だ。
そう決めつけながらゆっくり門をくぐった。
「あなたの名前は?」
幽霊の女が僕に名前を聞いてきた。
ということは……。
自分、呪われるのかな……。
「ぼ、僕は石川剛です」
「君は運が良いよ。私と会えるなんて……」
「あなたは?」
「私はリカ。ここに住んでいるんだよ」
賽銭箱の上に僕と同じぐらいの女が座っていた。その姿は幽霊っぽくなかった。
「リカはここで何してるの?」
「君を待ってた。私、ずっと1人だったの」
意味がひとつも分からない。
「村に戻らないの?」
「戻れない……」
戻れない?どういう事だよ。
「何で?」
「私はこの寺に封印されてて……動けないの」
「何で封印されたの?」
リカの顔が一気に暗くなった。
あまり触れられたく無かったのかな。
罪悪感が頭の中を過った。
「よし。この寺におみくじとかあるの?」
「そこにあるよ」
僕は話を変えておみくじを引きに行った。
そこに200円と書かれていた。
「お金入れないとダメ?」
「べつに良いよ」
おみくじの結果は……大吉だった。
あなたは何が起こっても生き抜く事ができます。
「私、大吉を引いた人なんて初めて見たわ。
あなた、明後日から動物変化の儀式でしょ?
きっと上手くいくわよ……。きっと……」
「ありがとう」
その瞬間、疲れが一気に押し寄せた。
そして僕は神社の中、眠りについた。
目が覚めるとそこは氷河の上だった。
何でここにいるのか。あまり思い出せない中、前へ歩き始めた。その時、僕は歩くスピードがいつもより遅いことに気が付いた。
どうして……。僕の体を見てその原因が分かった。僕はペンギンになっていた。
まだ儀式をやってないのに……。
「お前、どこのペンギンだよ!!」
1匹のペンギンが僕に近づいてきた。
僕が5歳に出会ったペンギンに似ていた。
「人間からペンギンになってしまって……」
「人間からペンギン!?」
そのペンギンの顔が険しくなった。
「どこに行けばいいんですか?」
「近づくな!!お前たちは裏切り者だ」
そのペンギンは名前も言わずに帰っていった。
裏切り者。その言葉だけが頭の中で反復して出てくる。どうして人間からペンギンになっただけで裏切り者扱いされないといけないのか。
意味が分からない。僕はどこに行けばいいのかも分からず、海に落ちてしまった。
「起きなさい!!」
その声で目が覚めた。ここは……家なのか。僕は人間のままだ。
さっきのは夢だったのか。そういえば僕って神社にいたような……。
「やっと起きたのね」
お母さんがベットの横の椅子に座っていた。
「神社は?」
お母さんは不思議そうな顔をしていた。
「神社なんてこの村には無いよ」
「え……。でもみたんだよ」
「幻覚でしょ?」
あれは幻覚だったのか……。
でも現実のように感じたけどな……。
目の前にあったカレンダーを見て思い出した。
僕にはまだ儀式があったんだ。
「今日何日?」
「今日は5月14日の朝。動物変化の儀式の前日よ」
「お母さん、ごめん。ペンギンの肉を食べれる気がしない……」
「私も子供のころからペンギンになりたて……あなたと同じようにグッズを集めたの。
そして10歳を迎えようとしたとき、ペンギンの肉を食べろって急に言われて焦ったの。
でもこのペンギンの肉を食べることで、私がペンギンになったときに死にかけている人がいたら救おうと決意したの。無理はしなくていい。
ただ、これからの生活にこの儀式は必要になると思う」
その言葉を聞いた瞬間、僕の心の中に食べる勇気が芽生えた。
リビングにあったペンギンの肉を食べ始めた。
ごめん。ごめん。
何度も謝りながら食べ続けた。
絶対に1匹も死なせたくない。
僕も生き抜くんだ。最後まで。
気が付くと骨しか残っていなかった。
お母さんは静かに見守っていてくれた。
「あとは前夜祭だけだね」
「うん」
自分の部屋に戻って前夜祭が始まるまで待った。あの夢は本当なのかな。
この村の誰かがあのペンギンを裏切ったとなるけど……。
この村にそんなことをする人がいるのか。
兄が持っていた小さい図鑑を読みながら、その時を待った。
「前夜祭始まるよ」
その合図と同時にリビングに向かった。
時は22時30分。
10歳の動物変化の儀式まであと1時間30分。
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