第2話
「ね、今日遊びに行こ!」
「昨日も遊んだじゃん」
「そっか。じゃあ今日も遊びに行こ!」
「残念。部活なんだ」
「ええええ期待させといて酷い!!」
「別にさせてないんだよなあ」
昼休み。
私たちは千歳が好きだという中庭で昼食を食べるのが普通になっていた。
誰も寄り付かず、手入れされていない中庭は初めは草がボーボーで、思わず「趣味悪」と言ってしまったのを覚えている。
そんな私に千歳は、「ナツ(千歳は私をそう呼ぶ)の部屋みたいだね」なんて返してきたけど。
__部屋が汚いとき、どうする?
__汚くないもん
__もしもの話だっての。いいか。部屋が汚ければ片づける。つまり住み心地は良くするもんなんだよ
そんな理論を言い放った千歳によって、私たちはその日から毎日草むしりをすることとなった。
私たちの努力によって見違えるほどきれいになった中庭は、今では色鮮やかな花々が咲いている。
鈴が、「お花見ながら食べたい」と言って、それぞれ種を持ち寄って勝手に植えたからだ。
今は夏。私が蒔いた種からは大きなヒマワリが咲いていた。
「千歳はクレープ食べたくないってさ」
「残念だね。あそこのお店美味しいのに」
「クレープ…!?」
甘いものが大好物な千歳は見るからに目を輝かせた。
「鈴、二人っきりで行こうか」
「待って!!」
「ん???」
「…明日。明日行こ?」
スイーツが絡むと途端に弱くなる千歳に私と鈴は笑う。
「どうしよっか?」
「千夏は意地悪だねぇ。私は明日でいいよ?」
「だってさ」
「え、なんて?」
「そこは聞いておけよ!
明日でいいってさ」
「本当!?よっしゃ!!」
ガッツポーズをする千歳にまた笑う。
まあ、三人で食べたほうが楽しいし、最初からそのつもりだったけど。
「じゃあ明日ね」
「今日はそれ楽しみに走るわ」
「それでいいのかキャプテン」
運動能力も高く性格も良い千歳は陸上部のキャプテンだった。
私と鈴は帰宅部。だって沢山遊びたいし。
「あ、そういえば今日の卵焼き自分で作ったんだよね」
「だからそんなに形悪いんだ」
「失礼だな。芸術と言え。
鈴卵焼き好きだよね。あげる」
箸で卵焼きをつまんで差し出すが、鈴の弁当箱へたどり着く前に横から現れた口によって奪われてしまった。
「あー!!!盗ったな!!傑作のやつ一個しか入れてきてないのに!!」
「いやしょっぱ!!!!塩入れすぎだろ!!!」
「……あらら」
「あららじゃないんだよ。あっぶな、今人救ったわ」
「え、そんなに?」
どうやらもう少し練習する必要があるみたいだ。
「うげ…体に悪い味がする……」
「それはいけない」
鈴には元気でいてもらわないと。
今度サラダでも詰めてこようかな。
「私のためにありがとう。嬉しいよ」
「それはどっちに対しての感謝なの?」
「…ふふ」
「鈴??」
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