第4話「とまどった少女」改3.00
「えっ?これ?」
サクラは女の子に存在を気づかれた。
じっと見ていたから感づかれたのだろうか。
女の子がサクラの方を見て、目を大きくしている。
ハードカバーの本を閉じていた。
「あなたも読んでるのね」
女の子はサクラの手元の本を見て仲間だと思ったのだろうか。
まゆげは少し垂れて、やさしい表情だった。
うれしそうに、頰を赤らめている。
サクラが話しかけられた瞬間、緊張が走って思考が守りの体勢に入った。
ちょっと考えてからサクラは黙ってうなずく。
少し警戒した。
ぼろが出ないように気をつけて。
「うれしいな」
女の子は自分の仲間を見つけたみたいにうれしくなったのだろう。
心が満たされたような穏やかな表情だった。
サクラは作り笑顔はせずに、ただ素顔でいるようにした。
「私、ハルって言うの。あなたの目ってきれいね」
突然の言葉にサクラは驚いた。
言われたことが無かったからだった。
心が跳ねるような感覚になる。
体は感電してしまったような気になった。
(私の事をそんな風に?)
普段初対面で気にされることでは無い。
目のことを言われたのは初めてだった。
ハルの目がこちらを見ている。
キラキラしてきれい。
その目がサクラの目をきれいと言っていた。
午前の最後の授業は既に始まっていた。
※※※
ハルの話しを聞いている。
サクラはなぜか落ち着いていた。
ハルの目を改めて見ると、本当にキラキラした瞳だった。
心の重りがどいたのか、軽くなった気がする。
清涼感の気持ちになって、癒やしてくれているような気がした。
「あっ、いけない、こんなに話してたら、仮病がバレる」
ハルの一言におもわず笑う。
サクラは口が開いて、歯を見せてしまった。
ハハハと。
「ちょっと、笑わないでよ、マジで焦ってるんだから」
ハルに怒られる。
痛い所を突いてしまったようだった。
ハルはムッとして頰を膨らませる。
まゆもグッと上がって強がっているようだった。
※※※
目線を斜め上に向けた。
壁にかけられた丸い時計を見ると、お昼休みの時間だった。
話に夢中になるとここまで経つのが早いのか。
サクラは思った。
ハルは「帰るね」と言って、手を振った。
友達の証なのか、親しみが込められている気がした。顔の右手の方で、バイバイのサインをしていた。
ハルはドアを開けて振り返った。
バイバイするのがさみしいのか?
ドアの向こうで右手を見せる。
もう一度、サクラに手を振った。
サクラはちょっと私の反応が薄かったのかな?と思ってそのサインを気にした。
※※※
・・・・・・。
ふぅ。
息を吐く。
ため息だった。
楽しかった時間が終わり、疲れた。
また、ふぅと息を吐く。
サクラはカバンから本を取り出し、表紙をめくる。
はさんでいたしおりを始めのページに挿す。
もう一回、最初から読み出した。
【続く】
※作者より※
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
この話を書けて本当に感謝です。
サクラの戸惑っている様子、可愛いですか?
ハルとはこれからどう関わってくのか。これからの話にご期待下さい。
よろしければ☆一つでも頂けると嬉しいです。
感想もお待ちしております。
では。
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