コーラス部へ
第11話 当時好きだった先輩の話
ふっと思い出した話。高1……4年前の5月程。合唱祭で馘首が決まって病んでいた頃。自分の声は何かがおかしいらしい、と漠然と恐れを抱いていた時。
ある練習中に、先輩の合唱を聞いてみよう、という回があって、それで聞くことになった。しかし自分は、そんなことより、音程をどうにかしないと身の破滅が待っている、というか聞く資格なんてないし、気まずいし、という流れで、その部屋から出て、スマホやらで自分で練習しようとした。
そんなとき、その先輩が自分を呼び止めた。「聞こうよ、楽しいよ? 」とか言っていた気がする。気の利いたお誘いだったので、自分は拒否権は使えずにとりあえずその教室に入った(断っておくが、自分は偏屈ではあるが、人の話を突っぱねたりしない)。
歌われたのは、『学園天国』。これまで(当時)合唱部で聞いた曲だと、一番好きな曲だった。スカーフのサイドアイテムを持って踊りながらパーカッションをつけながら歌っていた。正直、それでも自分が待望していたようなタイプの曲ではなかったけれど、上手かったし、ちょっと病みが穏やかになりもした。
あの束の間の休息は思い出になっている。にしても、好きな曲を歌わせて貰えないのは続いたが。その後、外部指導員のOGさんが、「今ある曲、あなたは全部はできる能力がないけれど、登板しないのはいやでしょう? どれがいい? 」、と言われたとき、「どの曲もやりたくない」なんて思いながら、「たしかに登板する必要はありますよね、でしたら一番簡単な〜を参加させて下さい」と言ったり。この中で自分の好み的に一番マシな、『学園天国』はどうみたって参加するべきじゃないし。
もう1回似たような事があったのが、2年の定期演奏会の、学年合唱の曲ぎめだっただろうか? もう部活に先輩はいないが、その時に、票が5-5で分かれて、自分は選ばねばならない立場になったとき、どっちかの機嫌を損なうトレードオフもあったけれど、結局どちらも歌いたい曲じゃなかった。
自分はマイノリティなんだから、全体的な満足を買うには妥協(それが苦痛であっても)しなくちゃいけないんだ、というのが常であった。自分があの部の中で自由に歌えたのは(それだってかなり譲歩した曲を!)最後の合唱の3日前のカラオケだけ。
前に、『学校を変える!』だとか謳っていた本が書いていたことがそれっぽいのか。「私は、ツーブロにしたいからツーブロ禁止の校則を廃止しろって言ってるわけじゃない! 生徒を支配してプライバシーを侵害するような校風を変えたいからこうして声を挙げているんだ」
話が反れるが、フェミもそうゆう意志がある。こまい指摘がウザったいかもしれないが、その奥にある、両性の生きやすさ、それに目を向けてほしい。
結局いって、入学前には、九州大会出場する程だったわが校のコーラス部は、私達の世代以降、衰退を続けてしまったと思う。あんな高度なパフォーマンスをやりたいっていう、熱意が後を託された一年二年(僕の代)に引き継がれただろうか?
僕がしょっちゅうサボタージュしたのは絡んでくるだろうか? そのさっき言った先輩以外は、被害妄想のせいもあって(冗談が通じず、殆ど純粋な悪意として翻訳されてしまう性格)不和だったこととか。
そんなこともあって、色々、これ以外にも色々、あって、もう合唱をするのはやめた。けれど、やめることを決定した自分にも神は厳しいようで、こないだラスト公演をしたとき、ウチの何個か前のグループが、寺尾聡の『Shadow City』を歌っていた。それは感動でもあり、自分の不運でもあった。あいにく、アレンジが僕は好きではなかったけれど、自分が大好きな曲が合唱で歌われることがあるんだ。その事実は天啓だった。そして、自分にはそのチャンスは二度と周ってこない、そうした直感も呼び起こした。
やはり脱線した。過去の思い出話をすれば、僕の口からは黒歴史しかでないんじゃないか? 全く、
追記
そういえば、母も言っていたな、「(主婦の仕事に)助けが欲しいことよりも、自分を認めて欲しい、ねぎらってほしい」と。僕は、母の感情を害さぬよう、適当な話で気を遣っているフリをするだけであったが。
ただの、ライフハック(日々のくらしがちょっと楽になる小技)みたいなように、親の気を遣っている。機嫌悪くされると生活能力なくなるから、そうやって。不孝者だな、本当に。
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