第9話 向先生へ

 二年間お世話になりました。なんだかんだ、自分の成長を感じている僕です。これから事務手続きがあると伺っていたのに遅れて出してすみません。


 先生にとっても、僕にとっても、クラスメート達にとっても、とてもイレギュラーな日々でしたね。大東亜戦争の最中でも授業があったのに、高校2年、学年末テストがなくなったのに始まって学校がなくなるという。

 そうして僕は、ハウステンボスにも、カラオケにも、同級生達と行く機会を失われた訳ですね。でもしかし、「コロナで青春を奪われた若者達はさぞかわいそうに」そういった言葉ははっきりと否定したいです。仲のいい友達とみんなで大人気のテーマパークや姪浜に行く、それだけが青春じゃないです。体を使って疲れる、そうではなくて、友達と話をする、そんな小さい幸せが僕にはいいです。


 さて、あの時のこと(不登校の時期)にも触れましょう。今の僕はなんとかなりました。まあ少し、スマホのいじりすぎで体が痛くなるようなこともありますが、心持ちがちょっと変えられて。

 スマホのいじりすぎ、姿勢の固定、みつきと一緒にいたころのフラッシュバック、コーラス・文芸の多忙と無力感、そうしたものがあって、連日の頭痛がありました。特に、朝は急いでいて追い詰められた気持ちがあって辛いものでした。


 みつきを見る彼らの目が自分に向く、それへの(高揚感と)恐怖、憎悪、悲嘆は大きいものでして。誰も信じられなくなってしまった。まあそれは嘘で、現実には香奈梅たちコーラスのみんなと、信長と風がいてくれました。そして、先生も、僕がとても酷い口の聞き方をしたときもありましたが、見捨てないで下さりました。そこはもう感謝です。

 僕自身は赴かずに、両親を差し向けてしまいましたが、僕の思いは伝えられて良かったです。


 僕の思い過ごし、それが少し壮大でしたね……。それがまだ重篤じゃない時期で良かったですが。


 3年になってからは、政経でちょくちょくお話ししましたね。今にして言えば、僕は少し肩を張って、自分にとっても知ったかぶりに言っていたりもしたものでしたが、楽しかったですよ。

 破防法の成立経緯をこれから読もうと思います。そこが結構気になっていましてね。


 結構人って変わるものですよね。この2年の僕を客観視したらなかなか見応えあるだろうな、と思います。服部先生がよく仰るものでしてね。一応、周回遅れであることもあるのでしょうが、大きな成長をとげることができました。


 向先生、これまでありがとうございました。


(終わり。補記します)

 僕って、小学生の頃に性格が歪みまして、「もう仕合わせなことは期待できない、悲しみこそが生きる実感だ」とか言って、自分の破滅に喜んでいた時期が長かったんですよね。

 それが暴発したのが高1です。みつきですね。あきらかにみつきの通る道は茨でしたが、僕はあそこに希望を持った。目的は自立だけじゃなくて、破綻ですね。そして、2節で述べることになる、あることもやらかしました。

 それが自分に刀を向けたのが高2でした。その自分の作り出したユートピアが、自分の体を苛むようになりました。そのため、これでは命を危険にさらすと判断して、転換を試みました。その助けになったのが、香奈梅でした。まあ、2節で述べます。

では

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