第8話 金川先生へ

 こんにちは、金川先生。この度は、今度こそ大学への進学が決まりました……。心配をおかけしました。言語文化だとか、国語科の教科再編の方はいかがでしょうか。少しお忙しいでしょうが、お体にお気を付けください。


 先生の現代文の授業が好きでした。1年の頃はちょっとばかしコトがあったもので、そんな中で、現代文と倫理、その授業のために登校してた、それくらい。

 授業定時をしっかり守られること。化学科では酷く、なかばみつきがキレかけていましたが、先生の授業では彼も心穏やかでいたことでしょう。僕はそこまでうるさい方ではありませんが、先生のお気持ちは非常に嬉しいものでした。休み時間が、というよりもそのお気遣いに。

 小咄を挟みつつの授業。『夢十夜』、読みましたが確かにエグい。夢ならではのイメージの拡大でしょうか。教科書の1話こそ良かったものの、ゾンビとか、バイオハザードというようなドッキリ系とは違うけれども、自分を追い詰め続ける恐怖が確かにそこにはありました。僕は、ゲームにもそのような表現があると思っていて、『omori』は人の恐怖を上手く具現化したな、と思いました。画面だけですが、恐怖の中で息が細まり、画面が縮まっていく。

 あと『城の崎にて』のやもりのくだりがすごい好きでした。発音もそうですが、志賀直哉の見つめた死生観がとても残酷でしてね……。石を投げられるネズミとかもう……。かわいそう、とも言うし、その憐れみの情がまた鋭い表現になって。すごい洞察ですよね。


 あと、自習ノートの存在ですね。小学校の頃は、自由帳は持っていましたが、絵が下手なものでどう使えばいいのか、と思っていたのですが、この時はなかなか楽しく書かせてもらいました。ゾーンに入ってたのを何個かご覧になったと思います。あ、詩は、せめて次見たときに意味が分かるものにしたいですね……。


 これから東京に参ります。『こころ』の文京区、太宰の三鷹、安吾の下北、等々心が踊りますね。

 僕は文学は専攻にはしませんでしたが、ある方(東様です)も仰っていたとおり、文を読んで心や哲学に触れること、それは続けます。政治学でも、効率に執心すると忘れてしまう危険や、精神がありますからね。


 それでは。シンポジウム等で会えれば嬉しいです。また会いましょう。

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