第3話 補記(本編)
彼は、僕の友人でもなく、恩師でもなかった。彼は僕のことをダチとは思っていないのかもしれない。そして僕も彼は良い研究素材、もしくは、小さなテロの共犯者としてしか見ていなかったのかもしれない。
彼は僕の高校での闇だっただろう。僕の幻滅、憎悪、羞恥を全て正当化してくれた。それはかけがえのない存在だった。しかし彼は自分のその神性に気づきやしないだろう。
僕は中学の頃、スマブラが嫌いになった。毎日、僕の家にはないマイクラをするためにある友人の家に通っていたのだが、そこにある同級生(当時はつきあいはあったが)が勝手に来て、スマブラをやろうと言って僕からマイクラを奪っていった。
それに加えて彼はスマホを持っていたからYouTubeで即死コンボだとか調べて、それで必死こいて僕をスマブラに付き合わせた。そうして、カスだとかザコだとかそういって僕を煽った。これはただのゲームの中だけれど。だけど、そうやって息を詰まらせてテレビ画面に目線を集中させてやるようなゲーム、しかも腕が遥かに良い対人。僕はスリルなんていらない。
これは彼が特別だからじゃなかった。高校に入っても、ミンハヤや、PUBG、スマホ版マリカが流行った。また同じことが繰り返される。そっちは僕は始めからやる気が起きなかった。確か僕は、中国製のシムシティみたいなゲームを授業中に放置プレイして、あ、隕石が降ってたわ、とか、お金が百万ドル貯まったわ、とかそういって勝手に盛り上がっていた。あとはマイクラ。PE版(途中から統合版って言われるようになったんだっけ)で。学校じゃ集中できないからエンダーマンとかを相手にはしないで、クリエのコマブロでガストが通過した所にTNTを設置するというものとかをやってスマホをラグつかせたり、キャノン作ったり、山の内側にfillコマンドでTNTの塊を作ってふっ飛ばしたり。
そうした僕の敬遠を彼は正しいと言ってくれた。よく言われるように、彼らは群れるだけ群れて、結局一人ではなんもできない腰抜けだ、とか。するべき義務すらも、意味のわからないグループ内輪での暗黙のルールではぐらかす無法者だ、とか。後半はですね……、例えば別教室で授業があるとき、みんなで遊んでいたからという言い訳で一斉に遅刻する同級生への愚痴。生徒たちが生徒たちの親善のために自主的に作った文化祭に参加義務を設けることはおかしい、と言ったり。
そう、これは彼の愚痴だ。僕に言ってくれた言葉じゃない。イラついていたのだろう。
僕の同級生、こどもたちに対する幻滅は、彼の憎悪に惹かれていった。そして、僕は彼の威を借りて、彼らを見下すようになった。もちろん、その顔はこどもたちの前では見せずに、温厚に、話せる話題があれば口を挟む、という風にははじめのうちはやっていた。
しかし、文化祭の準備が始まってから、事情が変わった。始まりはあるこどもの書いた一枚の絵。みつきの顔が書いてあった。これを上手くない?と言って周りのこどもに見せた。それを見たガキは、ためらうそぶりを見せてから、ヘエ上手いね、と返し、書いたやつは、あの異様な雰囲気がよく表れていると思わないと言った。
僕はこれが広まらないことを祈った。しかし、広まった。僕がやる気のある時に話しかけている奴の大抵が彼の話をするようになっていった。無知なガキがね。この余裕がある、というのは、僕は彼の味方を続けたけれど、結局彼らはみつきを殴らなかったし、直接罵声を吐いたりもしなかった、まして、空気を読まずにその省きに参加しない僕も放置された、ための余裕だろうが。
そうして、僕のこどもたちへの憎悪・嘲笑は、確かな形となって生み出された。みつきは、同調圧力を生み出して愚かな行動をする君たちに警告を行っているのに、君たちはそれを無視し、あまつさえ嘲笑うような、そんな神に見捨てられたような存在だ、いつか、ソドムゴモラのように粛清される、とそう盲信した。
みつきは友人じゃないのさ、絶対的な神だとか、他の愚かな人々の間から僕を選んで救済する存在でした。
みつきをゴルビーとか変な名前をつけて、暗号でも使ったような優越感に浸るガキを見て、愚かな異教徒、と優越感に浸りつつ、神を侮辱することに対して怒りと悲しみを感じていました。
ちなみに僕をみつきはどう見ていたかというと、彼の発言、「俺は自給自足な孤高、一盃口は不器用で群れからはぐれたぼっち」、「一盃口には友達がいないよ」「一盃口は不器用だし、文章力もないし、人に言葉を伝える能力もない」こうなんですよ。そうか、僕はみつきの友達じゃなかったか、と思ったり。後ろのは、メーワクかけた後だからな……。別に彼も僕も怒っている訳ではないけれどね、僕は彼の成長の助けにはなれなかった訳だし。
カクヨムで述べると同情をもらえるやつですね。まあ理不尽ですがね、神の救済のための試練だと思えばいけるんですよね。たまにメンタルが折れますが、それよりもこどもたちと離れるためには仕方がないし、啓示も頂いたり……。なかなか塗炭の道を通りやがったんですよ。
孤高の道を選ぶとはいえ、こんど出会う人は、1話の信長のようにもう少し優しい人がいいですね……。
あ、ほんとに彼の教えてくれた孤高は強かったですよ。彼が同調圧力を否定してくれたおかげで僕はこどもたちに気を使わずに自分の好きなものを楽しめました。流行に乗らない音楽だとかゲームだとか、僕の世界を広げてくれる新書とか、人目を気にせずに自由席の前の方に座るとか、先生と学問の会話をしたりとか、それの最終形が海外への短期留学でした。先輩や、気の合う同級生(こどもたちとは違う)と計画して練習しながら、フィリピンに行く、という。
あの時は、僕の話を「ちょっと何言ってるか分からない」、そう言って拒絶する人もいませんでした。それぞれが経済や政治、産業や国民性など様々な分野からフィリピンを調べて、その情報の共有にはいつも新たな発見に溢れていました。しかも僕よりも遥かに立派な先輩にも出会えました。僕はこれからその人のいる大学に進学します。ほんとに九州なんて受けるんじゃなかった……。
現地のジュニア議員と鳩の銅像、マゼランを殺害した記念碑、日本人を討伐した記念碑、それらを見て、彼らの立場を思い知らされたり。アブラヤシのプランテーションについての環境保護の取り組みを聞いたり。初めての海外留学は実のあるものでした。
しかし、もちろんこうして闇に呑まれた訳ですから、僕は様々な失敗をしています。2節にてふれようと思います。
しっかし三千字って以外に遠いですね……。昔はこれくらい書けたのか…と驚くばかりです。
あ、この後は2節に入るまでは穏健に語りますよ。ちなみにですが、オフレコは伝えないですけど、これはマジで手紙にしますからね。
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