SS 参謀殿の前夜

「諸君らの活躍に期待するっ!」


「「「「「「「「はっっ!」」」」」」」」


各都市に配置する部隊の編成が終わり、兵士達は己の持ち場へと向かって行く。


「・・・しかし、これで良かったのか?」


元々は今兵士を向かわせた編成とは違った編成と作戦を実行するつもりだったのだが、ある人物の助言を受け今の作戦に変更したのだ。


『えぇ。山岳の傾斜を利用した両側からの奇襲も悪くはありませんが、良くて全滅でしょう。自力が違い過ぎます』


「どういう事だ」


確かに不特定多数のアルターエゴ服用者は脅威だが、けしかける予定だったアーテリアの面々が遅れを取るとは考え辛い。


全てを識る者は薄く笑みを浮かべた。


『いずれ伝わる事なのでお教えすると、向こうには"海"がいるからです。だから最前線からの伝令が少なく、情報が遅れている』


「そんなものを隠し持っていたとはな」


私は頭を抱えた。


全ての母。その強力無比な能力で歴史を大きく左右してきたとされる正真正銘の世界最強の駒だ。


「だからこそ、敵の侵攻ルート上にある都市の兵力を現地の鎮圧と住民の避難が遂行出来る程に絞った訳だな」


『はい。下手に分散させても撃破されるだけ。ならば戦力を集中させ王都防衛戦へ持ちこんだ方が勝算があります』


「なるほどな。が、しかしそれでも"海"に抵抗出来るとは思えん」


策はあるのか、そう尋ねようとした時、彼の顔を見て愚問であると悟った。


『えぇ。私がどうにかしましょう。安心してください、作戦を変えさせてもらった筋は通しますとも』


そう言ってキャトルは去って行ってしまった。


彼はこの国を勝利に導く以外に目的があるように見える。


もし本当に"海"をどうにか出来るとしてこの国の今後を考えるならここでは無く都市で最終局面を迎えるのが好ましいだろう。


だとすれば彼の目標は"王都で戦闘を起こさせる事"だという事になるが、はたしてそんなことに意味はあるのだろうか。


「・・・はぁ」


今はこんなこと考えても仕方がない。


どうせこれから防衛ラインからの連絡が引っ切り無しにやってくる。


今の内に寝ておこう、そう思って私は備え付けられている仮眠室へ入った。

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