2.観音寺

 観音寺は鎌倉時代に建立された、この辺りでは有名な由緒ある古刹だ。私が会合場所の本堂に入ると、檀家の主だった者が既に集まって車座に座っていた。仏壇を背にして和尚が座っている。和尚は私と同じ年だ。和尚の隣の座布団が一つだけ空いていた。和尚は私を見ると驚いたような顔をしたが、すぐに横に座るように眼で促した。


 和尚の相談は、某テレビ局から来月の法要を取材したいと申し出があったが承諾して良いかということだった。檀家の者から反対の声はなかった。「今は情報化の時代じゃけえ、テレビくらいでんとなあ」といった声が多数を占めて、やがて「今はインターネットの時代じゃけ。観音寺もSNSで発信せんといかんのう」という声が聞こえてきた。


 和尚はパソコンが苦手だ。そんな声が檀家の者から上がりだしたところで和尚が散会を告げた。

 

 私がみんなに混じって本堂を出ようとしたときだ。和尚が私を呼び止めた。


 「あんた、ちょっと・・」


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