第4話「女市長との邂逅」

我輩達は再び役所に陳情に来ていた。

「また、来てくれたんですね。前回は申し訳ありませんでした」

役人が頭を下げて謝った。

こうして礼を尽くされると我輩達も何か申し訳無い気持ちになるが、これも市民の為。心を鬼にしよう。


その時、階上から声が聞こえてきた。

「あ〜ら、貧乏人共が生意気に陳情だなんて」

声の主はいかにも生意気そうな娘だった。

此奴は市長の…なんて名前だっけ?


すると、市長は階下の我輩達の元にやってきた。


「この市長…トルチョック・英美ひでみの目の黒いうちは市政に文句は言わせないわ」

「貴様が噂の悪徳市長か。これは丁度良いところに来たな。早速だが陳情させてくれ」

「ふん、好きになさい。私は忙しいんだからね」

「実は……」

我輩は暴徒のリーダー格の男からの依頼内容を説明した。


「…というわけで、この市には自警団が必要だ。それを組織する為の援助をしてもらいたい」

「確かに警察費用が掛かり過ぎなのよね…分かったわよ。でも、一つ条件があるわ」

トルチョック市長は我輩の目を見て言った。

「警察と合戦なさい」

此奴、とんでもない事を…。


「そんな無謀な事は出来んぞ」

市長は我々をざっと見渡して言った。

「そうかしら? 貴方達が警察に勝ったら自警団の予算を出してあげるけど?」

「いいのか?」

「えぇ、私の権限で出来る事ならね。承諾するならこの場で警察署長にも連絡するけど?」

「……承知した。では、ニ週間後の正午までに自警団を組織しよう」

「そうこなくっちゃ! 楽しみにしてるわよ!」


そう言うと彼女はどこかへ行ってしまった。

どうも女市長に乗せられた感が否めないが、暴徒達に話を持っていったところ、皆乗り気なのでこれでいいのだろう。

それにこの町の警察はヒラ以外は大体汚職塗れだ。ここで我々の実力を知らしめれば…。


我輩の口元が自然とほころんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る