第3話

 一年第二クラスの教室へ到着する。

 百人規模が入る教室とあってかなり広く、教壇側が下になる坂のようになっている。

 大体どこに座っても見えないということはなさそうだ。

 前の机から配布物を一通り取り席に着く。

 ずっとか今回だけかは分からないが一応座る場所は決められていてヨルとは離れてしまった。


「それじゃ、またあとでね。誰か一人くらいはいい人見つけてきてくれると嬉しいな~」

「はいはい。期待しないでね」


 さっきのグループ演習の件だろう。

 一人ずつ連れてくれば計四人で確かにちょうどいいかもしれないけど……

 

 僕の席の前後の席に人は居たが前の人は別の人と話していたので後ろの人にしよう


「こんにちは」

「……こんにちは?」


 随分と変な顔をされてしまった。

 何かおかしかっただろうか。

 そして話しかけてから気が付いたのだがこの人結構イケメンだ。

 赤みがかった茶髪でどうも庶民には見えない気がするが……

 話しかけてしまったものはしょうがない


「とりあえず一年仲良くできる人をってことで近かった君に声をかけたんだ。僕はオシロ シュウ」

「あぁなるほど。俺はエヴァン、詳しい自己紹介はホームルームでするだろうからその時に。察するに一年生のグループ演習の事もあるのかな」


 グループ演習とやらはそんなに有名なんだろうか。

 僕に学校のことを教えてくれた人は何も言ってなかったけど。


「そうそう。実はもう一人いるんだけどそっちも一人連れてきて合計四人でグループを組もうって言っててさ。どう?」

「そういうことなら、せっかくお誘い頂いたんだ。ぜひお願いしたい。特に誰と組むかは決まってもいなかったからね」


 やった、一人確保できたぞ。

 とりあえずこれでヨルに何か言われずに済むな。

 

 何を気にしてるんだろうか僕は。


「さて、もう少し話したいが時間みたいだ」

「はい皆さん。席についてこちらに注目してください」


 入口の方から先生らしき人が声を掛けながら入ってきたので僕も席につく。

 ってあの先生入学式の時にいたエルフの先生じゃない?


「今年一年、皆さん第二クラスの担任を務めることになりました、セルジア・リンデルハウスです。よろしくお願いします。」


 その先生が自己紹介した途端、教室がざわめいた。

 有名人のようだが残念ながらこちらの人間ではない僕には全く分からないのでちょっと聞いてみよう。


「ごめんエヴァン、あの先生有名な人?」

「おや知らないのかい?この魔法大学の教授連の一人、クラスⅤの魔導王じゃないか」

「いやちょっと事情があってあんまりその辺知らなくてさ……」


 しかしなるほどクラスⅤの人……




 クラス、その人が何をする人かを表す資格のような物。

 魔法などを扱う魔法系、剣や槍、斥候などの戦士系、あとは鍛冶や商売などもあるらしい。

 いくつか大まかな分類がありすべてに共通しているのはⅠからⅥのレベルに分かれている事とそれぞれ対応する協会や組織が認定を行っていることがある。

 レベルⅠは基礎的なことができれば取ることができるようだが、上に行くほど化け物じみた話がたくさんあるようでクラスⅤ以上は数えられるほどしかいないらしい。

 そういえば僕をこっちに引っ張り込んだノエルさんは何のクラスだったんだろう。

 この話を教えてくれたノエルさんの娘さんはクラスⅣって言ってたけど。




「何か困ったことがあれば遠慮なく私の所に来てくださいね。さてじゃあちょっとこのクラスのメンバーで自己紹介をしておきましょうか。名前と二年生での希望学科かな。後はまぁ他に何かあれば」


 これでヨルとエヴァンの詳しい事聞けるかな




「ヨルです!二年希望は戦士学部剣士科ですけど将来は魔法剣士志望なので魔法も勉強する予定です!よろしくお願いします!」


 ヨルは何を目指してるのかが分かっただけでシンプルな自己紹介だった。

 次に気になるのはエヴァン、の前に順番的に自分の番かな。


「オシロ シュウです。シュウの方が名前なのでこっちで呼んでください。魔法学部術式科希望です。かなり遠い所の出身なのでこちらの常識で疎い所もありますがよろしくお願いします」


 自己紹介はこんなものだろう。

 そして次はエヴァンの番だ。

 席から立った時になにやらざわついたような……


「俺はエヴァン、エヴァン・ナル・エンボルテン。エンボルテン王国の第四王子だ。王族ということにはなるがあまり気にしないでほしい。俺は王位継承権も高くなく、まして今はこの学校の一生徒だからね。戦士学部騎士科希望で卒業したら国で騎士団に入る予定だ。よろしく」

 

 その自己紹介で教室がさらにざわついた。

 え、僕もしかして結構な人に声かけちゃった……?

 謝っておいた方がいい?


「あの……エヴァン様、先ほどは無礼な口をきいて大変申し訳なく……」

「いや、今も言ったが気にしなくていい。むしろ声を掛けてもらって助かったくらいだ。君は本当に俺のことを知らなかったようだし、それなら下心もないだろう?話し方もさっきまでと同じで構わないよ」

「じゃあ……そうさせてもらうけど……」


 後から首を切られたりしないだろうか……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る