御神犬

新兵訓練施設。

　ドッグランは、和製英語。

　で、

　ドッグ・パークと呼ばれる――英語では。

　隔離さたスペースだが。引き綱をはずし自由に走り回れる犬たちの遊び場である。

　安全対策として、逸走（いっそう）防止のための二重ゲートがあり。喉が渇いたときのために給水設備などもを有している。他にも、飼い主たちも憩（いこ）うためのベンチもある。さらに暑い季節になどには、犬と飼い主の双方に日陰を提供する立木などが植えてある。地面は犬の爪や肉球を保護の観点から各種舗装がなされている。草地、厚く敷いたウッドチップ、タイル、あえて剥き出し。など、さまざま。

　さらに、

　ちゃんと犬のことを理解し、設計されているドッグ・パーク、では。犬の体格の大小を考慮し、犬をクラス分けするための仕切りをしてる公園もある。

　犬たちが、人に気がねなく、とにかく楽しむ場所。それが――ドッグ・パーク。

　な、の、だ、が…………。

『ぉーおーらー。スピード落ちてるぞぉーおー、クソども！』

『もぉ、もぉーおーぅう、むりぃーいー』『し、ししょう。ぃ、いったん、きゅ、きゅうけい、を』

『ボぉーおーケッ！　文句、言えてるうちは、まだ、まだ、走れる、わぁーあー！』

『ぅ、うわぁーあーん。楽しく走り回れるって、聞いて来たのに。ちがう――よぉーぉーーーーー！！！！！』

『ばぁ、ばか。でかい声で、叫ぶな！』

『それだけ、叫ぶことができるなら。黒、も。白、も。まだ、まだ、イケそうなだ、な。おらぁーあー、スピード上げろぉーおー！　ガキ共！！』

「ねぇー、おばあちゃん。真（ま）神（かみ）って、歳いくつだっけ？」

「十七歳、だな」

「人間の年齢に例える。と、いくつ」

「八十八歳、ぐらいだろう、な」

「すさまじい、八十八歳、だね。体力自慢の白と黒を追い回すどころか、煽（あお）りまくるって」

「真神は、元陸自の歩哨（ほしょう）犬（けん）だから、な。ぁ、名称変更されて。今は警備犬、だったな。その警備犬のなかでも、真神は、エリート中のエリートだから、な」

「とてつもないワンちゃんなのは、知ってたけど、さ――真神、が。おばあちゃん。真神って、どんなに凄いワンちゃん。な、の？」

「アイツ、は。Ｒａｎｇｅｒ（レンジャー）徽章（きしょう）を着用することを許されている――唯一無二の犬」