第41話 ヒカリノアトリエ


「さくら・・・」


彼女の気配を探り、足を引き釣りながら歩いた。

(こんなこともできるようになったのか。 ほんと人間離れしちゃったな。)


「・・・さくら!!」


彼女は巨大な大木の前に立ち、こちらに背を向けるように立ってた。


「人間か・・・」


彼女はゆっくりとこっちに振り向いた。

髪は真っ白に染まり、顔は同じだがこの時完全に気配は違うものに感じた。


「なぜ我に剣を向ける???」

「約束したから。 彼女と。 再生はさせないと。」


「お前たちは不完全だった。 再生を受ければ、

 お前たちが命を懸けて同種の盾になる必要もなくなる。 先のルシファーどもにおびえる必要もない。

人類100億が常に悪魔になる可能性を秘めている。

それを救ってやるというのだぞ。」


「でも、おれは今生きている人を守りたい。 積み上げてきた歴史をつないでいきたい。」


「そうか・・・だが、我は止まらぬ。 人間の意思など。」


「意思がなきゃ生きれねえよ。 それにおれは信じられてる!」


「この女のためか・・・ お前はよくやってくれた。 

 我が直接ルシファーに手を下さずに済んだ。 この器に傷つけられるわけにはいかんからな。」


「かそ人間の感情に働きかければ、簡単に操れる。」


「?? 何を言ってやがる。 お前のためじゃねえ。」


「この女がお前を好くように仕向けた。

 器を傷つけることもできまい。」


もうこいつになにを言われてもやり遂げるつもりだったから、動揺をしたっていいと自分に言い聞かせる。


「そうだとしても、ぼくが彼女を愛してる。

彼女が望むことをする。」


「ほんとにそうか?」


《/#&¥%$%€%°%☆°¥°#$・・・・》

術を唱え出すと、さくらだった人は淡白く光だした。


切りつければまだ止められる。

でも、髪の色以外の姿はさくらだということに

躊躇してしまう。


(くそ! やらなきゃ行けないのは

分かってるいるのに!!)


(おねがい、イチ! 器を!!)


「これは、まだ器が抵抗・・・・!」


「・・はあああああああああ!!!」


発光が止まった一瞬の隙をついて、剣を突き立てた。


「・・・愚か者どもめ」


(まだ、そこにいたんだね。必ず迎えにいく。もう一度会えるそんな奇跡を。)


(うん、期待しないで待ってる。)


眩い光の中に彼女は確かにいた。


傷口から光が衝撃波となって吹き飛ばされ、意識がとんだ。




目を覚ますと、砂浜で横になっていた、

まだ生きていることに、人類再生は起きていないことを悟った。



次の瞬間、つーっと涙が流れた。

悲しくなんかないのに、彼女が望んだことをしたのに。


さくらが言った期待しないで待ってるという優しい嘘が、今日のぼく、明日のぼくを動かしていく。








ーーーーブーブーーーー

ポケットに入れていた端末が震えている、

マスター専用の連絡端末だ。


「終わったみたいだな。」

「はい、彼女がやりとげました。」

「こっちも終わったようだ。 ちょっと前にあちらさんは全て引き上げて行った。」


おそらくルシファーが消えたからか。やつらは

白状だ。


「今日はもう休め。疲れたろ」


「そうします。 あの、これは関係ないんですが

世界中の人口は100億だって聞きました。

この国々を覆っている霧の向こうはまだまだ世界が広がってるんですか?」



「かも、しれないな。 そこは自分で見てこいよ。」


「相変わらず隠しごと多いですね、あと、これも」


途中で電話は途切れた。


(ほんとに勝手な人だな。聞きたいことあったのに)


「さて、ほんじゃあ行きますか。」


ぐっと大きく伸びをして、水平線をみつめると、

朝日がさしこんでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「君がここにいないから死にそう」とか絶対に言わない ちゅろす☺♡ @Churro69

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ