第39話 最終決戦1


「ようやく見つけた。」


現れた男の姿を確認すると、ぐわっと強烈な記憶が頭を駆け巡った。


2Mを超える身長と長い腕、青がかった肌。

忘れもしないあの最悪の夜、マサトを殺したあの悪魔だとすぐに思い出した。


「・・・お前!」


「? なんだ。 いきなりやる気か?」


ヤツはとぼけた顔をしてこちらに近づいてきた。


「・・・殺す!!」


首元めがけてとびかかり、斬りかかった。


「おいおい。話聞けよ。」

左の手の甲で剣を防がれた。 顔には余裕の表情を浮かべている


「痛い思いしたくないだろ」


ヤツの言葉には耳を貸さず、何度も剣を振るうがすべて防がれる。


―― 固有霊術 “瞬転” ――


背後に回り、首を切り落としたと思った一撃は、寸前で防がれた。


「おい、腕落ちたじゃねえか。」

ヤツは肘から先がなくなった右腕を見つめつぶやいた。


―― ”ビチッ” ――


バッと腕を振ると、さっきまでなくなっていた腕はすっかりともとに戻っていた。

(やはり再生能力が桁違いか。)


「おい。 貴様、やめろ 無駄なことはするな。」

見下すような視線とその言葉に気温が一層ぐっと下がった感覚がした。


「俺様のいう通りにしろ。 そうすれば苦しむことはない。」

「悪魔のいうこと聞くわけないだろ・・・! 特にお前にはな!!」


「ん?」


数秒お互いにらみ合いが続き、ヤツは何かに気づいたように口元に笑みを浮かべた。


「あの時のガキか・・・! なんとも偶然。 俺様は運がいい。

 あの夜に貴様を殺さなくてよかった。」

「思い出したか、あの日からずっとお前を殺したかった。 」


握った剣に力を込める。


「動くな。」


強烈な圧力に思わず身体が固まってしまった。

(なにビビってんだ・・・! うごけ!!)


「貴様には二ついうことを聞いてもらう。 いいな。」


「1人。 あの女をここに連れてこい。

 2つ。貴様は俺様に喰われろ。 簡単だろ。」


「2つ目の理由がわからないな、それに・・・」


―― ”ガキイイイイイイ” ――


「お前に喰われるのも、さくらを差し出すのもお断りだ!!」


真正面からの突きを前蹴りで受け止められる。 衝撃で周囲に砂埃が舞った。


「・・・なら、貴様が殺してくれを懇願するまで痛めつけよう!

 四肢をもぎ、あの女も助けられないと絶望して死ね!!」


―― 邪神霊術 “プレス” ――



―― ”ボココオオオオ” ――

さっきまで自分が背にしていた木が縮み、ぽっかりと何もなくなった。

(あの黒円。空間を圧縮しているのか・・・ まともに喰らうとまずい。)


「逃げてばかりだな。さっきまでの威勢はどうした!!」


―― 固有霊術 “瞬転” ――


ヤツの頭上から切り落とすも、強固な腕ではらわれる。


「貴様がカギになるとは思わなかった。」

「はあはあ・・・! 何かが!!」


「あの忌まわしき”神”を殺すのに必要だとは。 貴様を喰らえば俺様はついに神に触  

 れる! 復讐を果たせる!!」


「はあ、はあ・・・俺は喰われるつもりはないぞ。」

(もっともっと、集中しろ! 力を貸せ!!)


激しい攻撃に防戦一方になってくる。


「貴様にはわかるまい。人間どもが信じる”神”はクソだぞ。

 故に殺す。 俺様をこのクソな世界に堕とした復讐だ。」


「そして俺様が”神”になる。」


「ガハッ!!」


斬撃を躱され、一瞬で距離を詰められ首根っこをつかまれた。

(息ができない・・・! “瞬転”も発動できない。 なぜ!!)


「ああ、あのちょろちょろできる術は出せないぞ。  

 魂ごと掴んでしまえばな。 あの天使もほんとに目障りだったな。

 俺様の周りを挑発するような。」


「・・・ぐっ、があああ」


「あの小僧が役に立ったよ。お前がカギだと教えてくれた。」

「・・・小僧???」

「お前の傍にいたあの男だ。 親を殺し、妹殺すと脅せばすべて吐いた。」


直近でずっと傍にいたのは・・・ソラ君か!


「お前・・・!」

呼吸ができず、言葉はうまく出せない。


「まずは”腕”だ。」


首をつかんでる方とは逆の手で、俺の左手の根元を強く引っ張る。


(があああああああああああああああああ!)


ひどい痛みに声を上げようにも苦しく、叫べもできない。


―― ”ぶちいいいい” ――


不快な音の後、ヤツはちぎり取った腕を後ろにポイっと投げ捨てた。

(いてええええええ。)


「次はこっちだな。」

ぐっと右肩をつかまれる。


(このままだと死ぬ・・・! だめだ! 死ねない!! 

 集中しろ! 底にあるエネルギー引っ張るイメージで・・・)


「・・・ぐっ、があああ」


―― ”ドンッ” ――


強烈な衝撃で身体を後ろに投げ出されると、誰かに受け止められたように体を支えられた。 

前を見ると、ヤツの両腕は引きちぎられたのか赤黒い血を流していた。


「はあはあ、これは?」

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