第36話 愛の告白


「寒くない? 大丈夫??」

「うん、あったかいよ。」


リュックの中にあったインスタント食品を食べると、すっかり辺りは真っ暗になっていた。


「すごい綺麗。 星がこんなにきれいに見える。

 いつも夜は悪魔退治だったから、夜はあんまり好きじゃなかったけど、

 悪魔が出ないと考えるといいね。」


「うん。   あの、 ありがとね。」

火の傍で体育座りして下を向いたまま彼女は僕にお礼を言った。


「ん? 何のこと??」


「初めて会った時、助けてくれて。」

「そんな前のこと。 急にどうしたの??」


「最初は放っておいてって思ってた。 生きたくないもない、

 でも死ぬ勇気もなかった。  突然すぎて目の前が真っ暗になって。

 イチ君があの時私に気づいて、連れ出してくれたから、

 私はまだ笑えて、生きる理由を見つけることができたの。」


「ううん、 それは君が強いからだよ。 僕は何もしてないよ。

 マサトにも言われたけど、教団に預ければ何とかなるかもって責任もなく

 君を送ったのは本当にごめん。 君をこの世界に巻き込んでしまって。

 戦うのは怖くない??」


「怖くないって言ったらウソになるかな。やっぱり。

 でも、人間いつ死ぬなんかわからないから。 もうくよくよしたり、

 迷ったりしないって決めたの。」


さくらはいつも勇気をくれる。がんばらなきゃって思わせてくれる。

きみは心をぽかぽかさせてくれる。


「ねえねえ。ちなみに、いつもあんな風に弱ってる女の子を連れて行ってるの??」

「っ違うよ!!! そんな言い方って、ひどいよ!」

「あはは! 冗談だよ。君がそんなことしないことしないのは分かってるから。」


雑談が一区切りすると、僕らはそこで今日は夜を明かした。




「おはよ。 じゃあ早速黒本を探しに行こう。」


そういって日々探すが、黒本は見つかることはなくこの島に来て3日が経過した。



いまだに見つからない状況に、砂浜に2人で寝そべって、のんびりと

夜空を眺めていた。


「明日見つからなかったら島1周することになるよ。」

「そうだね。 はあ、暖かいお風呂入りたい~」


確かに、3日間2人で無人島でサバイバルな状況だから、さくらと同じように

暖かいお風呂に入りたい。



「ねえ、もし悪魔がいなくなったら、どんな生活したい??」

考えたこともない質問に、思わず頭をぐるぐると回転させた。


「考えたことないなー。 しいて言うなら、世界中旅してみたい。

 ありきたりだけど、今思いつくのはそんなところ。

 ちょっと考えてるから、さくらから教えて。」


「私? んーッとね、今は一緒に寄った孤児院でお手伝いしたいって思ってる。

 悪魔がいなくても、困ってる子どもを助けるお仕事をしていたいかな。

 あの子たちにまた会いたい。」


「いいね。子どもたちに授業してたもんね。」

孤児院で、さくらが子どもたちの前で教えていたのを思い出した。

そして、さくらと出会ってから、再開するまでのことが走馬灯のように頭を駆け巡った。



「どう? 行きたい場所とか決まった?」


「んーっと。 まずは透明な海がある島、湖に映ったオーロラが見える国。

 虹色の花びらを持つ花が咲く山は行きたいかな。

 あとは、あ!  君と見た桜を見たいな・・・ さくらと・・・」


僕の告白後、波の音だけが2人を包んだ。


「え・・・?」


「・・・・だから、さくらのことが好き。   

 多分、 やっぱり一目惚れだった。 

 ここには二人しかいないし、もし失敗したら気まずくなるのは

 分かってるけど、 それでもなんか、君が好きだって伝えずにいられなかった。」


勇気を出して思いを伝えて、さくらのことをまっすぐ見ると、

彼女は驚いた表情をしたまま、まっすぐ涙を流していた。


「え!? ごめん! やっぱりタイミングとか・・・」

「違うの・・・!」


「告白されるのなんか初めてで・・! なんかいろいろと。その、うれしく 

 て・・・!」


嫌われたわけではないとわかって一安心した。 

ただ、自分でもわかるくらい顔が真っ赤になってるのは治りそうにない。


「私も、同じ気持ち・・・ 君が、好き・・・」


ほとんど聞こえないほど小さい声だったが、 今日一番の集中力で聞き取った。


「もう、今日は寝るから!! おやすみ!」

さくらは急いで立ち上がって、寝床へ戻っていった。




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