第35話 黒本


「わあ。きれいな島だね。」

「よかった! うまくいった!!」


僕は繋いだ手が離れることなく、2人ともオノゴロ島まで無事たどり着けたことに

まずは安心した。



「あ、そうだね。 ほんときれいだ。」

白い砂浜に青い海。 手つかず自然が目の前に広がっていた。



「わ! この砂、歩くと鳴るよ!!」

さくらはすり足で擦るように歩いて見せると

「クックッ」と砂が鳴いているように聞こえた。

「こうやって体験するのは初めてだ。 この場所は本当にきれいな場所なんだね。」


さくらはニコニコで鳴らして回っていた。

初めて会った時の彼女とは別人のように明るく、元気になっていた。



「さくら! 黒本を探すに来たんだよ。 ほどほどにね。」

「あっ! そうだったね。 ごめんごめん。」

僕らはこの島にあると言われる黒本を探して、島を探索することにした。



「でも、いつの間に術を行使できるようになってたの?」

「お師匠さんが言うには、私には素質があったんだって。

 でも、めちゃくちゃスパルタだったよ。 毎日いろんなところで特訓。特訓。」


よっぽどしんどかったのだろう、物思い更けるように目を閉じていた。


「でも、この力は一子相伝だ。 ご両親は???」

「んー。私の両親は普通のひとだったよ。 ごくまれにこういった事例があるんだって。 お師匠さんは何人かいたって言ってたから。」


「てか、君が今持ってる”黒本”には何が書いてあるの?」


以前ちょっとパラパラと読んでよく分からなかったから、

ずっと解読はしていなかった。


「”起源の種”と”再生の器”というのは見たよ。」

「そう。」


「私探してくるから、読んでおいて。そこにヒントがあるかもだし。

あと、燃えそうな木を集めといてね。」

さくらは島の中心に向かって進んでいった。


手ごろな大きさの石の上に座り、

読み進めると、”起源の種”とはなにか言うのが書かれていた。

(天使と契約した家系の子か)


{ ―”起源の種”― それは神を殺す力を持つ

 神の使者との契約するものと、神から離反した天使の血を継ぐもの。


 ―”再生の器”― 神が人間界に降りるための肉体}


(でも、ここに書いてあるものは禁忌なはず。

 悪魔と子をなすのは"離反者が生んだもの"としてこの前見たはず。

 なにか条件があるはず・・・

 神から離反した天使の血を継ぐ者は悪魔ではないのか??)




「どう?何かわかった?」

さくらがふーっと一息ついて隣に座った。


「ー”起源の種”ー それは神を殺す力を持つ。ってあるんだけど、

 神なんか見たことないし、なんで殺す方法が乗っているのかがわからない。

 アダムの血を継ぐのはマスターだ。 この言葉から一番マスターだと思うん

 だけど・・・・  悪魔との子は禁忌だし。」


「そうなんだ。 確かにお師匠さんはアダムの血族って言ってたね。

 天使の力のつながりもすごいある。

再生の器って言うのは・・・」



突如ぽつぽつっと雨が降り出してきた。

「さっきいいところ見たからそこに行こう!」


さくらに連れられて、僕らは岩の隆起で雨風をしのげる場所に入った。


ザーッと雨に降られ、すっかりずぶぬれになってしまった。

「ふー。 濡れちゃったね。」

「いろいろ持ってきたけど、とりあえず火を起こそう。」


マスターにもらったキャンプ用のリュックからライターを取り出し、

集めておいた木で火を起こした。


「イチ君。手慣れてるね。」

「うん、マサトと野宿するのが多くて。 こういうのは全部教えてもらった。」



濡れた服を乾かそうと上着を脱いだ。

「なに!? 急に脱いで??」

さくらは顔を手で覆った。


「あ! ごめん。 この服を乾かそうと・・・ かぜひくから。

あと、あったかい毛布はカバンにあったから。

それで今日はしのげるかなと。」


「そういうのは、前もって言ってもらわないと。 っくしゅん!」


「さくらも、濡れたのそのまま着てると風邪ひいちゃうから・・・」

「ううう。 こっち見たらコロスからね。」



さくらとは反対方向へ向き、毛布で身体を包んでもらってから

火の傍で身体を温めた。




 

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