第33話 再会
「大丈夫?」
青白い光が、周囲を包み込んでいた。
「だれ・・・?」
声のする方を向くと、黒く長い髪に、印象的だった透き通った目をした女性が
こちらを心配そうに見ていた。
「イチくん? よかった。 ここから逃げよう!」
最後に別れてから、きれいだった黒髪に白髪の束が差し色になっている。
包まれるような声は変わってないな。とか、
この状況なのに、一瞬で頭はさくらのことでいっぱいになった。
―― ドンッ ――
衝撃にハッと我に返った。光の向こうから赤い閃光が衝撃を与えている。
(これはさくらの力? 兄貴が向こうから攻撃してるのか・・・)
「久しぶりだね。 さくら。 会えてうれしいよ。
助けてくれてありがとう。 でもほんと、ごめん。」
―― 固有霊術 “瞬転” ――
シールドの外へ移動し、兄貴の頭上から切りかかり、剣と剣がぶつかり合った。
「あの女は誰だ? いい能力を持っているな!」
「彼女に、近づくな!!!」
―― ガキッ ガキンガキッ ガキ!! ――
剣と剣がぶつかりあう音が洞窟に響き渡る。
(瞬転で移動しても移動先が読まれる以上攻撃的に使えない。)
身体はとうに限界を感じている。 もう負けないという意地だけで戦っているような状況だった。
「お前を殺して女も後で殺してやろう!!」
「!! 彼女に手を出すな!」
「なら俺を殺してみろ。」
―― ガキンッ ――
渾身の一撃も防がれてしまう。
「俺に対する憎しみで動きがよくなったな。
お前もこっち側へ来るか? そうすればもっと強くなれる。
愚かな人間にも心を痛めることもない。」
「はあ、はあ、 そんなこと言うなよ。
これ以上、兄貴のことを嫌いになりたくないからさッ!」
―― 固有霊術 “瞬転” ――
「見えてるぞ!!」
「危ない!!!」
―― ドンッ ――
さくらのシールドが展開されて、攻撃は寸前のところで遮られた。
「なんで入ってくる!? 危ないだろ!!
これは僕と兄貴のことだ! さくらには、」
バンっと頬に走った衝撃に、頭に登った血がスーッと落ちるのを感じた。
「君が危ないからに決まってるでしょ!」
言葉よりも、大きく見開いた瞳に思わず納得させられてしまった。
「私も戦える。 攻撃はまだできないけど、君を守れるから。」
「・・・ありがとう。でも、」
「私が君を守る。」
「うん、わかった。」
ふーっと息をついて、捨て身で突進していく。
―― 憑依転霊 翼閃 ――
「無駄だ!」
斬撃は弾かれ、前方から溶岩流が飛んでくるが、さくらが展開した
シールドが僕を守った。
「はあああああ!」
―― ザンッ ――
胸元切り裂いたが、傷は浅かった。
「いい連携だ!!」
―――― 咆哮溶岩砕 ――――
「ぐうううううう」
シールドで直撃はさけたが、今の僕を動かなくさせるに十分な威力だった。
「まだ・・・」
ゆっくり立ち上がり、構えると、兄貴の視線が僕の奥に移ったのが見えた。
「何の用だ。」
兄貴は僕の後ろに向かって言うように大きい声を出した。
「随分と生き生きと話すようになったな。」
声のした後ろを振り返ると、さくらを連れて行ったマスターの姿があった。
「下がってろ。」
さくらに肩を貸してもらう形で立ち上がり、後ろに引き下がった。
「でも、2人はどうしてここに?」
「お師匠さんに助けろってだけ言われてきたの。
でも、イチ君がいるなんて知らなったよ。」
「お師匠さんって呼んでるの?」
「うん、そう呼べってあの人がね。」
相変わらず高飛車というか、我が強い人であることは知っていたがそこまでとは。
「痛む?」
「うん、でも大丈夫。」
僕らが手前の方へ、下がるのを確認すると、マスターの方から兄貴へ
攻撃を仕掛けた。
その戦いは目で追うのがやっとで、自分がまだまだ弱いことを思い知らされる。
戦いは長引くのかと予測したが、安心感からか突然僕は意識を失った。
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