第25話 島と教団

「というか、なんで辞めた人間が一緒にいるの。ねえ、デカチチ眼鏡さん。」

今朝、出発しようとホテルを出たところに一人の女性が待っており、

ヤマトさんの事情聴取についてくるというのだ。

城までの車中には僕、なぎささんとその女性の3人で向かっていた。


「たしかに今は教団の人間ではないけど、今は世界共通政府の一員ですわ。

今回の事件は、私が受け持っている案件に引っかかるので。」

運転中のため、表情とかは読み取れないが、漫画で見る金持ちキャラの話し方をする人だ。


「これはどう見ても教団の案件じゃないの? 政府が直接現場に人をよこすのは私は初めてなんだけど。」

「教団の案件というのは、政府の案件でもあるのです。

 ただこの島に来たのは、この事件のためではなく、あなたに会いの来たのですわ。」

バックミラーで後部座席にいるデカチチ眼鏡さんこと"ミカ”さんをちらっと見ると目が合った。

「え・・・?僕ですか???」

「そうですわ。」

全く予想してなかったから、ハンドル操作を誤りまっすぐな道を踏み外しそうになった。

「あんた何をしたの?? まさか2人・・・?」

助手席にいる渚さんが、意味深な表情でこちらを見ているのを視界の端で感じた。

「いや、今日が初対面ですよ! ねえ、ミカさん!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「なんで無言なんですか!!」

「なんなのあんたたち、そういう関係なの??」


「はあ、違いますわ。 お二人ともご冗談はそこまでしてください。」

(冗談って・・・自分が黙ってたからじゃないか!!)

「今日はわたくしも一緒に参加して、教団を監査します。よろしくお願いしますわ。」



城の一室に入ると、ヤマトさんが待ち構えていた。

「今日はあんたが知っていることをすべて話してもらうから、よろしく。」

なぎささん進行で1時間ほど行われた。


「まとめると、この島は昔から悪魔に悩まされていたということですね。

ヤマトさんのご先祖様が生贄をささげることで、被害を抑えられるものとして若者を差し出した。犠牲を減らした功績から地位は確固たるものになられたのですが、

裏では悪魔と生贄をささげる取引をしていただけだと。」

ミカさんのまとめを聞いている間、ヤマトさんは終始うつむいていた。


「今回は悪魔の要求に間に合わずに、観光客を事故に見せかけて襲ったと・・・」

ミカさんの説明を遮って、なぎささんが怒りのこもった声で問い詰めた。

「・・・まあ、そうなんね。」

俯いたままヤマトさんは答えた。


「はい。 では続けます。

教団の人間が初めてこの島に来た時、優先的に資源を渡すことを条件にあなた方の一族を守ること・賄賂を渡して教団の関係者には口止めをしていたというわけですわね。 島民以外の人間に生贄のことを悟られないこと・悪魔と取引したことを公にしないために。」

一通りの聴取をした後、ミカさんが内容を振り返った。

(自分たちのためだけにそこまでするのか、その教団関係者も最悪だ。)


「このことは政府に打ち上げて、教団を含めどうするか処分を決めていただきます。」

ヤマトさんは力なく立ち上がり、部屋の外で待っていた教団の人に連行されていった。


「では、わたくしはこれで失礼いたしますわ。」

ミカさんは席を外した。

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