第15話 終戦

―――― バリィィンッ ――――

屋上から下を見ると廊下の窓が割れると同時に、ソラ君が飛び出してきた。

そして、すぐ後ろから巨大な真っ黒い影に姿を変えた悪魔が彼を追うようにビルから現れた。


―― 憑依転霊 ――

屋上から飛び降り、術を展開して悪魔に向けて剣を向けた。

「はあああああああああああ!」


空中で悪魔に向けて剣を突き立て、そのままドンと地面に叩きつけた。

「ぎいやああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

地面に押さえつけられた黒い影の表面に無数の口が現れ、耳をつんざくような断末魔がこだまする。

(これは・・・)


ただ、暴れる悪魔を逃がすまいと剣を突き立て押さえつける。

(なんという力だ。剣が・・・・)

「信じてって言ったじゃないですか。踏ん張ってくださいよ。」

ソラ君が加勢し、2人一緒になって剣を押さえつける。

「うおおおおおおおおおおお!」

時間にして10秒くらいか、広がっていた影が小さくなり、断末魔が小さくなって聞こえなくなるころには完全に悪魔は消滅した。


「はあっ!はあっ!」

悪魔が消滅したのを確認すると、ぐったりと地面に寝転がった。

「ありがとう。 ソラ君のおかげだ。」

「まあ、そうですね。」

「お、冗談とか言うんだね。えへへ。」

2人とも疲労でぐったりしていたところに母親だったのであろうさっきの女性が近づいてきた。


「返しなさいよ。 私の娘を・・・」

茫然自失といった様子だ。 ただ彼女がした過ちをわかっているため同情はできなかった。

戦闘中に悪魔の中に残る残留思念が伝わってきた。 彼女がどうして悪魔に喰われたのかも。


「娘さんのことは残念です。お悔やみ申し上げます。

あの・・・娘さんはずっと寂しかったのだと思います。 このビルにたまに来るのも、あなたが探しに来てくれるから。 

困らせたいんじゃなくて、怒ってくれるだけでもそれが愛情だと、あの子は感じていたんだと思います。

あなたが毎日忙しいのがわかっているから、寂しくてどうしようもないときはここに来ればと。 

悪魔は卑劣です。娘さんが抱く寂しさに目を付けたのでしょう。」

「私のせいなの? あの子のために毎日1日中働いて・・・」

言い終える前に彼女はガクッと泣き崩れた。


「誰も悪くありません。悪いのは悪魔です。」

ただ悪魔のために罪のない人を餌にしたことは許せない。 ただ、今の彼女に言うべきではないとぐっとこらえた。


「もう行きましょう。これ以上は。」

ソラ君に促されて、その場を後にした。

「娘さんのこと知ってたんですか?」

「いや、最後に悪魔から感じたんだ。こんなことは・・・初めてだ。」

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