第7話 決意
その日の夜、食堂でさくらとシホさんがいないことに気づいた。
「シホさんとさくらちゃんは外の物置の戸が開いていたから、カギを閉めに行くって言ってた。」 子どもたちの中で一番年上の女の子が答えた。
(このあたりは街灯がないから外が暗くて心配だ。早く戻ってくるといいけど。)
玄関まで出て2人が戻ってくるのを待っていると、感じていた不穏な予感が的中した。
(この感じ・・・悪魔とは違う。)
目を細めて遠くを見ると、校舎前の広場の地面からぼこぼこっと地面がうごめきだし、
“亡骸”が現れた。
「みんな! 校舎に戻って! エイシンさんのところへ。」
子どもたち数人も一緒に玄関のところへ出てきていたので、エイシンさんに任せた。
(“亡骸”にしては数が多い・・・)
“亡骸”
古より人間の肉体を喰らう。海外ではゾンビと呼ばれるこの生き物はこの国のみで突然発生する。
僕は団服を取りに行く暇はないと判断し、地中から這い上がってきた亡骸を1体ずつ退魔剣で首を切り落としにかかった。
こいつらは力は強いが、首と胴体を切り離せば絶命させることができる。
(なんで・・・こんなに同じ場所にたくさん出てきたんだ・・・)
「さくら!!!シホさん!!!」
戦いの最中に大声を出して呼びかけ周りを見るが、二人の姿は見当たらない。
1体の亡骸を倒すと、その奥に校舎とは反対に歩いていくのが見えた。
(まさか・・・!)
広場から離れていく亡骸を追うと、逃げ回っているさくらとシホさんが亡骸に追い詰められているのが見えた。
2人を追い詰める2体の亡骸に向かい、後ろから首を切り落とした。
(まず、1体!! 次、間に合え・・・!)
シホさんを庇うようにしゃがみ込んでいるさくらと亡骸の間に、とっさに自分の腕をかませた。
「痛ッッッッッッッッ!」
左腕を嚙まれたまま自分の方へ引き寄せ、そのまま剣をのこぎりのようにして首を切り落とした。
「大丈夫か!?」
声をかけると、二人は恐怖と安堵の入り混じった顔を浮かべていた。
「うん、ありがとう。大丈夫だよ。 でも、腕が・・・」
「僕は大丈夫。 こんなけがは問題ないよ。2人とも無事でよかった。」
校舎に戻り、全員で無事がどうかを確認して回った。
「みんな大丈夫?」
シホさんが子どもたちの様子を見て回っていた。 どうやら全員けがはなかったようだ。
(よかった。みんな無事で・・・本当に。)
みんなの顔を見ると思わず涙が出そうになった。
「お前は大丈夫だったのか?」
みんなが集まった食堂の中、エイシンさんが僕に尋ねた。
「はい、僕は大丈夫です、 鍛えているので。」
「見せて! すぐに手当てするから。」
さくらが救急箱をもってきて、消毒をし、包帯をテキパキと僕の腕にを巻いてくれた。
「ありがとう。これくらいのケガは慣れっこだよ。」
「ごめんなさい。私のせいで・・・」
悲しそうな顔を見せたので遮るように声をかけた。
「謝らないで。 でも、みんな無事でほんとにほんとによかった。」
自分のケガよりも、みんなが無事でほんとに安心した。
(ふと、マサトが言った「悪魔祓いは人を守るものだ」という言葉が頭の中で反芻する。)
悪魔祓いになりたかったのは、母さん、マサト、孤児院のみんなを悪魔から守りたかったからだ。
僕はもっと強くなるしかない。強くなって命尽きるまで全うしてやる。
(そして必ずマサトを殺した悪魔を見つけ出し、始末する・・・!)
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