第28話 情報交換と

「あ、あのー、お勉強中にすみません!」

「は、はいっ」

 ミディアムロングの銀髪に青の瞳。

 綺麗で大人しげな容姿を持つ涼羽の隣に座った白雪綾は、チラチラと様子を伺いながら、姿勢を正しながら……こんな声をかけていた。


「も、もしかして……あそこの店員さんの春斗さんの妹さんだったりしませんか!?」

「え……」

「実はその、うち、春斗さんにはよくお世話になってて! なのでご挨拶を……と!!」

「ええっと……違います……」

「え、ええっ!?」

 まさかの返事にピンクの目をまんまるにする綾。


 彼女が春斗の働きぶりを熱心に見ていたこと。

 そんな彼女が春斗と同じパーカーを着ているも、体のサイズに合っていないということ。

 つまりは春斗から借りたものだということ。

 そして、春斗には妹がいること。

 点と点と繋ぎ合わせ、『兄を待っている』と自信満々な予想が浮かんだからこそ、声をかけて……誰よりも驚く綾なのだ。


「そ、それは本当にすみません! なんだか勘違いをしてたみたいで!」

 手をパタパタしながら慌てて謝罪。客観的に見れば変人になっているのだが、全部が全部間違っているわけではない。


「あ……大丈夫です。春斗お兄さんのお友達ではありますので」

「あっ、じゃあそのパーカーはやっぱり!?」

「は、はい。今日は春斗お兄さんのお家から一緒にこのカフェに来まして、その時に外は冷えるからと気遣ってくれまして」

「ほ、ほえ……」

 次々に飛び出る言葉に、口をぱかあと開けてしまう綾。

 妹ではないのに、『春斗お兄さん』との呼び方。

『一緒に来た』なんて仲の良さ。

『外は冷えるから』と気軽に服を貸せる親密度。

 頭が真っ白になるには十分なのだ。


「あ、あの……お姉さんは春斗お兄さんのお知り合いですよね?」

「う、うん! もしよかったら自己紹介を……いい? ちょっとその、春斗さんのこととかいろいろ聞かせてほしいなぁって」

「あっ、わ、わたしも聞かせてほしいです……」

 配信のスキルでグイグイといける綾と、控えめな涼羽の相性は悪くないもの。

 そして『春斗』という共通の知人がいることはなにより大きなことだった。



∮    ∮    ∮    ∮


「ご来店ありがとうございました!」

 白雪綾の来店から何十分が経っただろうか。

 次から次へとくるお客さんをどんどんと捌いていき、余裕が出てきた春斗は、ふと客席に目を向ける。


 そこには目を奪われるような容姿を持つ知人が二人。


 涼羽が着ているパーカーを、綾が嬉しそうに触っていた。

 そして、お互いに笑みを浮かべながら話し合っていた。


 初対面であるはずなのに、なぜか来店客の誰よりも仲よさそうにしている。


(な、なにがあったんだろ……)

 そんなことを思いながら、パチパチとまばたきをさせる春斗だった。



 * * * *



 あとがき失礼します。


 この度は長くの休止を申し訳ありませんでした……。

 ゆっくりとではありますが、これから更新を再開させていただきます!

  

 また本作、

『煽り系ゲーム配信者(20歳)、配信の切り忘れによりいい人バレする』は、オーバーラップ文庫様より書籍化&コミカライズが決まりました。


 またお知らせすることがあるかと思いますので、その際には改めてご報告させていただきます。


 それでは引き続き何卒よろしくお願いいたします。

 

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