(3)
「だから、どこなんだよ?」
「えっと……この辺りの筈なんですが……」
地下街に入り、更に「従業員以外立ち入り禁止」のドアをこっそり開け……そこからが問題だった。
吾朗は地図が表示されているらしい
「し……師匠、ここ、明らかに変です」
吾朗が急に慌て出した。
「何がだ?」
「ここ、GPSの電波が届いてません」
「つまり、場所を間違えてても判んないって事か」
「は……はい……」
「おい、一端、戻るぞ」
「は……はぁ……」
今まで、吾朗のペースだったが……よくよく考えりゃ俺の方が師匠だし、こいつは何だかんだ言って下っ端だ。
そろそろ俺のペースでやらせてもらうか……そう思って……道を戻ると……。
黒一色の姿だった。
黒い上着。
黒いブラウス。
何と言ったっけ……? 富士山の噴火の少し前から流行り出したピッチリした女物のズボンも黒。
警官か軍人の帽子に似たデザインの黒い帽子をバイザーを斜め後ろにして被っている。
腰には、これも黒いブランドものらしい革のポーチ……。
富士の噴火前なら……渋谷か原宿にでも居そうな感じの若い女。
多分……
だが……どこかに違和感が……いや……こんな場所に若い女が現われた時点で違和感もクソも無いが……。
「道に迷われたのですか? ここは関係者以外、立ち入り禁止ですよ」
「お前は関係者だとでも言うのか?」
吾朗が不審げにそう言ったが……。
「背広のポケットを御確認下さい」
その女はそう言って、俺を指差し……。
「えっ?」
右のポケットに……嘘だ……。
一枚の厚紙と……コインかメダルのような何か……。
紙は名刺。「英霊顕彰会嘱託・百瀬キヅナ」とだけ書かれている。
そして……メダルのようなモノは……おそらくは発信機。
どこで……この町を仕切ってる奴らに目を付けられた?
その時、俺の「気」が探られる気配……。
女は、一瞬だけ怪訝そうな表情になる。
「変な方ですね?『魔法』の修行はされているようですが……今は力を失なっている。そして……筋肉は肉体労働者のもの……。何者ですか?」
し……しまった……。
昨日の晩に呼んだマッサージだ……。
その時に気付かれたらしい。
筋肉の質や凝り方からして……肉体労働をやってる可能性が高い奴が高級ホテルに泊まっている。
あのマッサージ師も、ここを仕切ってる「自警団」の手先だったら……当然、上に報告するだろう。
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