(4)

 その時、背後から嫌な気配がした。

「お……おい……吾朗、何やってる?」

 吾朗の奴が「使い魔」である赤い鳥……正確には赤い鳥に見える霊体……を呼び出していた。

「何言ってんですか? まずは、こいつを何とかしないと」

 ところが……今度は……周囲のあらゆる場所から嫌な気配。

「おい、その女をブチのめせ」

 吾朗は……人間にしてゴーレムフレッシュ・ゴーレムに命令……。

「ゔッ」

「師匠どいてっ」

 クソ、こいつ、昔のギャグSFに出て来るロボットより融通が効かねえ。

 俺に構わず狭い通路を突進。

 危うく俺は味方に突き飛ばれかけ……。

 え……狭い通路?

 ターミネーターもどきは……狭い通路のせいで巨体を活かしたデカい動きが出来ない。

 黒づくめの服の若い女は……ターミネーターもどきのパンチをあっさり躱す……。

 そうか……さっき感じた違和感の理由……。

 あの女……足首まではお洒落シャレオツな格好だが、靴だけは走り易く動き易そうなスニーカーだ。

 嫌な気配……あの女が使う「魔法」の気配……は、まだ感じられる。

「おい、吾朗、何の魔法か判るか?」

「判りません……変です……魔法は……俺達に向けられてないような……」

「どうなってる?」

 次の瞬間……。

「う……うわあああッ‼」

「そ……そんな……」

 俺達の体に無数のネズミやゴキブリがたかっていた。

「吾朗、何とかしろッ‼」

「無理です」

「何で?」

「もう、あの女の『魔法』は終ってます。既に存在しない魔法を消す方法は……」

 えッ?

 あ……既に、あの女の魔法の気配は消えてる……。

 どうやら、あいつの魔法は小動物を集めるだけで……後は、集めた小動物が暴走するに任せているらしい。

 そして……。

 女の姿は消えていた。

 いや……微かな……魔法の気配がする……。

 どこだ?

 次の瞬間、足首のあたりに、ほんのわずかな……チクリという痛みを感じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る