(2)

「センセイ……何やってんですか?」

 吾朗が朝っぱらからそう言った。

「た……たのむ……後、一〇分だけ……」

 俺は、朝飯を喰った後、ホテル内のカジノが開くと共に、またスロットを始めていた。

「そろそろ出掛けますよ」

「出掛けるって……どこにだ?」

「会ってもらいたい方々が居ます」

「誰?」

「ウチの自治体への移住希望者の代表の方です」

「へっ?」

 ……えっと……何を?

 あ、そうか、俺、ここでは「地方議員」って設定だった。

「で、その人はどこに居るんだ?」

「付いて来てもらえば判ります」

 そう言うと、吾朗は俺をカジノから連れ出した。

 ロビーを抜けると、ホテルの玄関口には……俺の妹弟子にして総帥サマに「生きたゴーレム」に変えられた哀れな若造が待っていた。

 いや、サングラスしてガタイがいいから……背広を来たターミネーターに見えない事もない。

「じゃあ、師匠、ちょっとここまで行ってもらいます」

 吾朗はホテル内とは違って、俺を「師匠」と呼んだ。

 多分、ここの「自警団」の手先や一員に聞かれる心配は無い、と踏んだのだろう。

 そして、吾朗が指差しているのは……。

 俺は……その指の先を見る。

 多分、今、俺は……「お前、何を言ってるんだ?」って表情ツラをしてるのだろう。

 こんな御時世だが、テレポーテーションが物質透過みたいな異能力の持ち主の存在は確認されてない筈だ。

 なので、「ハリー・ポッター」の映画みたいに、ここに魔法のドアが有る筈も無い。

「え……えっと……」

「地下です」

「へっ?」

「この『東京』には、もう1つの『東京』が有るんですよ……地下にね」

「え……い……いや、ちょっと待て……何がどうなってる?」

「そこの住人と……ここの『自警団』がトラブってるらしいんで……手を貸してくれそうなんですよ」

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