(10)
「な……何なんだ、ここは?」
「ウチの本部ですが?」
無個性な雑居ビルが立ち並ぶ中に有ったのは……昔のヨーロッパを思わせる白い建物。
人工島の筈なのに、狭いながらも、ちゃんとした庭まで付いていて、木々は緑の葉を繁らせ、花壇には花が咲いていて、芝生の手入れもバッチリ。
塀や建物の所々に俺がかつて所属していた「魔法結社」のシンボルである「薔薇と十字を組合せた紋章」が有るが……どうやら結界を張る為のモノらしい。
「も……儲かってんだな……」
「ま……警察が頼りにならなくて『神保町』内の自治会や企業や店は、ウチに結構な『税金』を払ってるんで」
「準備は整ったようだな」
玄関から出て来たのは、かつての妹弟子にして、この「自警団」の総帥。
ラフな格好だが、着ている服には、しっかり「防護魔法」がかけられてる。
問題は、その後ろに居るヤツだった……。
目立つ縫合痕など無い。
耳の所に巨大なボルトが有る訳じゃない。
着てる服も、クリーニングから戻ってきたばかりって感じの背広。
だが……俺が想像したのは……昔の映画の「フランケンシュタインの怪物」。
一九〇㎝ぐらいの体格。
目は虚ろ……。
口は半開き……。
「だ……誰だ……それは?」
「俺達の護衛ですよ」
吾朗がそう説明する。
「護衛?」
「ええ、昔、ちょっと不始末をしでかした若いのを『魔法』で色々と改造してね。筋肉量を増やしたり、骨を頑丈にしただけじゃなくて、脳にも手を加えてます」
「待て、待て、待て、待て……」
「まぁ、並の拳銃弾なら、こいつを『肉の盾』にすれば防げますよ」
「お……お前ら……」
「何ですか?」
「人権って言葉、知ってる?」
「難しい問題ですね」
「へっ?」
「ここまで改造するのに何年もかかったんで、こいつがいつの時点で厳密な意味での『人間』じゃなくなったのかは議論の余地が……」
「やめろ、やめろ、やめて下さい」
「まぁ、普通の社会常識は有るように振舞えますが……実質的には自我も知性も無くなってるんで」
「何なんだ、こいつは一体……」
一見すると……「ちょっとホニャララな図体のデカい
たしかに生きている人間の「気」だが……何かが欠けている。そして、欠けている「何か」が何なのか……巧く言い表せない。
強いて言うなら……「感情や理性を感じさせる『気』」。
「まぁ、人間を原料に作ったゴーレムってとこですね」
まぁ、確かにファンタジーRPGに出て来るような無機物・無生物を材料にした「ゴーレム」の製造に成功した「魔法使い」の話は、現実では聞いた事が無いので……伝説上の「ゴーレム」の正体も「『魔法』で肉体を改造し、自由意志を剥奪した『人間』」だったのかも知れないが……。
「これで何とか胡麻化せるでしょ」
そう言って、かつての妹弟子にして現・総帥サマは……その「ゴーレム」の目にサングラスをかけたが……い……いや、待て、何か、まだ、その……。
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