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「な……何なんだ、ここは?」

「ウチの本部ですが?」

 無個性な雑居ビルが立ち並ぶ中に有ったのは……昔のヨーロッパを思わせる白い建物。

 人工島の筈なのに、狭いながらも、ちゃんとした庭まで付いていて、木々は緑の葉を繁らせ、花壇には花が咲いていて、芝生の手入れもバッチリ。

 塀や建物の所々に俺がかつて所属していた「魔法結社」のシンボルである「薔薇と十字を組合せた紋章」が有るが……どうやら結界を張る為のモノらしい。

「も……儲かってんだな……」

「ま……警察が頼りにならなくて『神保町』内の自治会や企業や店は、ウチに結構な『税金』を払ってるんで」

「準備は整ったようだな」

 玄関から出て来たのは、かつての妹弟子にして、この「自警団」の総帥。

 ラフな格好だが、着ている服には、しっかり「防護魔法」がかけられてる。

 問題は、その後ろに居るヤツだった……。

 目立つ縫合痕など無い。

 耳の所に巨大なボルトが有る訳じゃない。

 着てる服も、クリーニングから戻ってきたばかりって感じの背広。

 だが……俺が想像したのは……昔の映画の「フランケンシュタインの怪物」。

 一九〇㎝ぐらいの体格。

 目は虚ろ……。

 口は半開き……。

「だ……誰だ……それは?」

「俺達の護衛ですよ」

 吾朗がそう説明する。

「護衛?」

「ええ、昔、ちょっと不始末をしでかした若いのを『魔法』で色々と改造してね。筋肉量を増やしたり、骨を頑丈にしただけじゃなくて、脳にも手を加えてます」

「待て、待て、待て、待て……」

「まぁ、並の拳銃弾なら、こいつを『肉の盾』にすれば防げますよ」

「お……お前ら……」

「何ですか?」

「人権って言葉、知ってる?」

「難しい問題ですね」

「へっ?」

「ここまで改造するのに何年もかかったんで、こいつがいつの時点で厳密な意味での『人間』じゃなくなったのかは議論の余地が……」

「やめろ、やめろ、やめて下さい」

「まぁ、普通の社会常識は有るように振舞えますが……実質的には自我も知性も無くなってるんで」

「何なんだ、こいつは一体……」

 一見すると……「ちょっとホニャララな図体のデカいあんちゃん」だが……身にまとっているのは……霊感が有る子供が近くに居たら泣き出すのが確実な何とも不穏な雰囲気オーラ

 たしかに生きている人間の「気」だが……何かが欠けている。そして、欠けている「何か」が何なのか……巧く言い表せない。

 強いて言うなら……「感情や理性を感じさせる『気』」。

「まぁ、人間を原料に作ったゴーレムってとこですね」

 まぁ、確かにファンタジーRPGに出て来るような無機物・無生物を材料にした「ゴーレム」の製造に成功した「魔法使い」の話は、現実では聞いた事が無いので……伝説上の「ゴーレム」の正体も「『魔法』で肉体を改造し、自由意志を剥奪した『人間』」だったのかも知れないが……。

「これで何とか胡麻化せるでしょ」

 そう言って、かつての妹弟子にして現・総帥サマは……その「ゴーレム」の目にサングラスをかけたが……い……いや、待て、何か、まだ、その……。

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