落石
私は朝起きて喉の違和感に悩まされていた。昨日しゃべりすぎた私の自業自得なのだが、やっぱりつらいものはつらい。
「フェンー。どーしたらいいの?」
「ご自分で何とかしてください」
私はフェンにかすれた声で助けを求めたが突っぱねられた。
全くもうー、反抗的ですね。反抗的なフェンには私にモフモフされる刑に処します。
えいっ。
「フェンはずるいねー。こんなにモフモフで可愛いから何でも許してしまいます」
「エ、エウアドネ様やめてください。もうキャラバン隊が出発しますよ」
仕方ない。ここまでにしてやります。
キャラバン隊はシラエ山まであと少しのところの山道を走っている。ちなみに私は一番先頭にいる。フェンと共に慣れないガタガタ道に酔っている。
「うぅ。しんどい」
「エウアドネ様、私達はずっとほうきで飛んで旅をしていましたから仕方ないです」
「そうは言ってもね……。うぅ。吐きそう」
私が馬車に酔っていると「盗賊だ」と後ろから声が聞こえた。馬車を止めてもらって私は飛び降りる。
私が飛び降りたと同時にゴロゴロと何か大きい物が転がってくる音がした。私が上を見た時には岩が落ちてきていた。
昨日、盗賊は散り散りなって逃げていた。原因はあの魔女だ。護衛を倒してあとは荷物や金銭を奪うだけだったのに邪魔をされた。俺らをまとめていたリーダーがやられた。
これから誰がまとめる?
誰かじゃなく、俺がまとめなくてはならない。
まず、俺は散り散りなった仲間を集めた。仲間を集めるのはなかなか骨が折れた。一人の魔女にみんなビビりすぎだ。
そして次に、今後の方針を決めた。あの魔女にリベンジするという声が多かった。あんなにビビッてのにやる気だけは旺盛だな。
魔女にリベンジするならと作戦を考えた。これがなかなか困難だった。意見がぐちゃぐちゃに出てきた。
「魔女に正面から挑めばいいだろ」
「魔女に一番ビビッてたやつが何言っているんだ」
「じゃあ、何か策でもあるのか?」
等々、全然話しがまとまらない。ここはリーダーである俺がまとめなければならない。
「みんな一回黙れ。要は魔女を倒せればいいんだろう」
俺はこんな作戦を提案する。
キャラバンの後ろから襲って魔女をおびき出して、魔女を岩によって殺す。そうすればあとは奪うだけでいい。簡単な作戦だ。失敗しようがない。
そして今魔女は岩下敷きなろうとしている。
空から岩が降ってきた。いや、崖からか。岩をどうにかしないといけない。あの岩の数は受け止められない。吹き飛ばすか。岩に対処するために私は杖を一振り水球を出す。そしてもう一振り炎を出す。
水球が落ちる岩の真ん中あたりに来たところで炎が触れる。水球の温度が唐突に上がり爆発。岩が
この技は私が火山で見つけたものだ。初めは興味本位で始めたのだがあんなに大惨事になるとは思わなかった。
これは私が火山に行った時の話だ。火山の火を水で消せないかと考えて魔法で火口に水を突っ込んだ。そしたら大爆発が起きた。なんか水は急激に温度を上げると爆発するらしいです。
ほんと、びっくりしましたよ。あの時は助かったが奇跡みたいな状態でした。でも今、それを応用することで岩を木端微塵でいている。結果的に言うと私の命が助かったのだ。
爆発で岩は四方八方飛び散った。私はこっちに飛んできた破片を受け止める。破片は時間が止まったように宙に浮いたまま止まる。
「皆さん。大丈夫ですか?」
皆、私に返事をくれた。無事みたいだ。
「こっちは大丈夫みたいだが向こうが大変みたいだ助けに行ってくれ」
アルフレッドが叫んだ。
了解です。
私は宙に止めてあった岩の破片をキャラバンの最後尾のさらに向こうへ向け飛ばす。向こうで砂煙が上がる。
私はすぐに後ろへ向かう。
盗賊は文字通り散り散りになっていた。かろうじて生きてはいるが、岩の破片が刺さっていて到底戦えそうに見えない。
「これで終わりですね」
意外と重労働でした。少し疲れた。
「まだだ。まだ終わってはいない」
崖から盗賊が数人、降りて来た。
「だいぶ派手にやってくれたな。魔力も使い果たしただろ」
そう言う盗賊の多分リーダーであろう人に仲間を気遣う気持ちは感じられなかった。
盗賊のリーダーは仲間を率いて私に向かってくる。でも、剣先が私に触れるかどうかの寸前で止まる。
「なに⁉ どうしてだ?」
「私が魔力切れでも私の使い魔は違うかもよ。ね、フェン」
「そうですね。エウアドネ様」
私達はその直後に追加の護衛と引き換えに盗賊を引き渡した。
「ここがシラエ山ですよ。エウアドネさん」
アルフレッドが二股に分かれた山頂を指している。
「今までありがとうございました。アルフレッドさん」
「いや、こちらこそお礼を言わなくてはいけない。こんな強い魔女に会えたことは我々にとって幸運だった」
「そんな強いなんて。言いすぎです……」
私は照れ隠しと言わんばかりにフェンを顔の前に持ってくる。フェンは私の行動に呆れている。
「さて、冗談はこれくらいにして。行きますか」
私はほうきを魔法でポンと出し、シラエ山に向かって飛んでいく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます