アルビノドラゴン
私はシラエ山を超えて飛んでいる。山を越えた先には森が広がっている。果てしない緑の海。その海をすべるように飛ぶ私。フェンはいつも通り籠の中から顔を出している。
「フェン。川見える?」
「見えません。エウアドネ様」
「そうだよねー。ないよねー」
川が見えない。これは大問題だ。川がないということは滝もない。もしかしたら本当にないのかもしれない。
「エウアドネ様、あれは何でしょうか?」
フェンが指した方向を見ていると何か飛んでいるのが見える。
「あれ鳥じゃない?」
「そうですか? 鳥よりも大きいように見えますけど」
言われてみればそうかもしれない。
「じゃあ、グリフォン?」
「それも違うような気がします。なんというか、ゴツゴツしています」
「じゃあ、何なの?」
私は頬を膨らませてフェンに文句を言う。
「エウアドネ様。そんなに怒らないでください。ほら、こっちに来るので見えますよ」
何か分からない飛行生物はフェンの言ったとおりこちらに向かって飛んできている。
「エウアドネ様。あれ、大きすぎませんか?」
言われて見れば大きすぎるし、爬虫類みたいにゴツゴツしている。
「あれ、ドラゴンじゃない⁉」
私は180°回転して逃げる。白いドラゴンが追ってきている。すぐに迫ってきそうだ。
私は魔法で石を作りドラゴンに飛ばす。カンという音が鳴り弾かれる。全く効かない。
氷も炎もまるでだめだ。何もかも弾かれる。ドラゴンは炎を吐いている。私の腕ならまず当たらない。でも、近づかれればほうきからはたき落とされるだろう。
私は全力で逃げる。
時折、魔法でけん制しながらほうきを右へ左へ攻撃をかわす。
このままでは私の魔力が切れるのが先だ。
「フェン、何か有効だ入れられない?」
「あの
フェンでも無理か。
じゃあどうすればいいんだろう。
「フェン、あのドラゴン、アルビノだと思うんだけど」
「はい、エウアドネ様。目が赤いので間違えないかと」
アルビノは目の色素がないので強い光に弱い。もしかしたら、強い光を当てれば逃げられるかもしれない。
「えい」
杖をドラゴンに向ける。光がドラゴンにあたると動きが止まる。
そのすきに私は地面に降りて隠れる。ドラゴンはそのまま飛び去った。
「フェン、どれくらい離れた?」
「ドラゴンに追われて必死だったのでわかりません」
「だよねー」
周りは森に囲まれていてどこがどこだかまるでわからない。
「ねえ。フェン。水の音しない?」
「エウアドネ様、確かにしますね」
フェンも聞こえるということは間違えなく川がある。私は水の音の方に向かった。
確かに川があった。その川を下流に進むと滝もあった。
「フェン。滝だよ。滝ー」
私はフェンを持ち上げてクルクル回る。
「目が回ります、エウアドネ様」
「そんなこと言わないの」
私がフェンで遊んでいると頬にポツンと雨が降ってきた。急いで雨宿りをする。
「この天気じゃ。見れそうにないね、流星群」
「どうしますか? エウアドネ様」
「どうもこうもしないよ。待つだけだよ、フェン。それに食糧だってたくさんここにある」
私はパンなどの保存食が入った籠を突き出す。突き出してみたもののまるで中身が何も入っていないかのように軽い。
いや、これ何にも入ってないわ。
どうやら、ドラゴンに追われているときに落としたようだ。
「フェン、どうしよー。食料がないよ」
「どうもこうも帰るしかないですね」
「そんなー」
こればかりは仕方ない。雨が上がり次第帰ろう。その頃にはドラゴンもいなくなっているだろう。
雨が上がった。もう夕暮れで、空が真っ赤に染まっている。
夜飛ぶのは危険だ。前が何も見えないから。でも、食料がないので一刻も早く帰らなければならない。
「フェン、歩いて移動しようと思うんだけど、どう?」
「それしかないと思います」
「じゃあ、フェン明かり頼める?」
狐火が現れ、フェンの周りが明るくなった。
「ありがとう。フェン」
少し進んだところに小高い丘があった。
「フェン、あの丘から見渡せかも」
「そうですね。登りましょう」
私達は丘を登り、辺りを見渡す。満天の星空が広がっている。でも、辺りは暗く何も見えない。
私は空に杖を向けて火の玉を発射する。遠く離れた所は見えないがだいたい周りのことはわかった。
フェンが私のローブを引っ張る。
「なに? フェン」
フェンが後ろを指して振るている。
「後ろがどうしたの?」
全くもう、フェンはかまってさんだなぁ。
私が振り向くとドラゴンがいた。
「ど、ど、ど、ドラゴン‼」
私は思わず後ずさりする。でも、よく見たら寝ていた。
ふぅ。よかった。
心臓が止まるかと思いました。寝ているなら大丈夫だ。………起こさない限り。
私はそっとカメラで写真を撮る。
「貴重なアルビノドラゴンの写真は撮っておかないとね」
私がシャッターをパシャっと切ると狼の鳴き声が静寂の夜に響いた。
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