夕食

 私はキャラバン隊の人達と夕食を共にするために向かう。


「夕食何だと思う? フェン?」


 正直、私はメニューはお腹を満たせれば何でもいい。でも、フェンが気に入るかは別だ。


「また太りますよ」


「ひどいです。私はフェンのことを気にして聞いたのに」


 やっぱり、反抗的になってません?

 

「私は悲しいです」


 私は目を拭くふりする。


「冗談はやめてください。エウアドネ様」


「ばれた?」




 夕食はシチューと干し肉とパンだった。まあ、キャラバン隊だからこんな感じだと思っていましたがその通りだとは………。


「エウアドネ様はどんなのを期待していたのですか?」


 私の「期待はずれ」という顔を見てフェンが干し肉をかじりながらそう言った。


「少しは期待したっていいでしょう」


 私はフェンの頬をツンツンする。フェンは「エウアドネ様、やめてください」と言いながら私の手を払おうとする。でも、私はフェンの頬をつつくのを止めない。


 ツンツン、ぺしぺしの応酬戦が繰り返されていると、キャラバン隊のリーダーと思われる人が来た。


「何度も言いますが助けてくれてありがとうございます。キャラバン隊の夕食はどうですか?」


「普通ですね」


 私は思ったことをそのまま言う。キャラバン隊の人は苦笑いをして「そうですよね」と言った。


「私はこのキャラバン隊のリーダーをやっている。アルフレッドだ」


「アルフレッドさん、よろしくおねがいします。私はエウアドネ。見てのとおり魔女ですよ」


「そうか。エウアドネか。こちらこそよろしくおねがいする」


「私達、二股山を探しているんですけど知りません?」


 二股山がどこにあるのかわからないのでキャラバン隊の人が知っていたらラッキーだ。


「二股山?……………もしかしたらシラエ山のことじゃないでしょうか?」


 シラエ山?あー確かそんな名前でしたね。すっかり忘れていました。


「そうです。そこへ行きたいんです。方角教えてくれません?」


「ちょうどよかった。私達もそっちへ行くので案内しましょう」


「わかりました。シラエ山までここから何日かかります?」


 私はシラエ山までの時間を聞く。正直言うと、今すぐにでもほうきで飛んでいきたいけれど護衛をすると決めたのだ。最後までしないと。


「明日の昼までには着きますよ」


「そうですか。明日の昼までですか」


 明日の昼までか。意外と早いですね。


 そういえば、盗賊の処理を任せっぱなしでしたね。どうなったのでしょうか?


「盗賊はどうしたのですか?」


 私がそう問うとキャラバン隊のリーダーは何かなっとした顔をした。


「ちゃんと縛っていますよ。明日、シラエ山付近で護衛を迎え入れると共に受け渡す予定です。魔女さんに護衛の代わりをいつまでもやってもらうわけにもいかないですから」


 私はきっととても驚いた顔をしていたでしょう。うまく隠していたつもりなのに。どうして? なんでばれた? 恥ずかしいですよ~。


「魔女さん。人柄は黙っていてもわかりますよ」


「うぅー。そんなものですか?」


「おーい。魔女さんこっち来てくれ。今日の晩餐ばんさんの主役は魔女さんなんだから」


 真ん中で集まっている人たちが私は呼んでいる。私は逃げる口実ができたとキャラバン隊のリーダーから逃げる。



 真ん中に老若男女ろうにゃくなんにょ火を囲んでいた。焚火が風にあおられこちらに煙がモクモクと向かってくる。


「ゲホゲホ」


 私は煤だらけになった。帽子からローブまで灰を被っている。フェンもゴホゴホ言いている。みんな「大丈夫か」とか「今拭くから待ってて」言っている。私はそれを止める。


 私が杖を振るうと灰が吹き飛んでいく。もちろんフェンも灰を飛ばす。フェンが子供たちの目に止まったのか「きつねだ」「可愛い」などの言葉が飛んでくる。


「その狐は何? ペット?」


 一人の女の子がフェンのことを聞いてきた。やっぱり子供は好奇心旺盛だなぁ。


「フェンは私の使い魔だよ~」


 私はフェンを持ち上げながら答える。さらに私はフェンの手を振る。そしたらフェンから「やめてください」と小さく抗議の声が聞こえてきた。


 うふふ。止めなーい。


「魔女さんは何をしているの? さっきみたいに盗賊をやっつける仕事?」


 私が何の仕事をしているかといえば何もしていないのだが、いて言うなら珍獣カメラマンかな。


「私はねー。珍獣カメラマン。つまりー。珍しい生き物を探して旅をしているんだよー」


「カメラマン?」


「カメラは知ってる?」


 女の子は首を横にフリフリする。カメラはとても高価なものだ知らないのも無理はない。


「ちょっとそのまま立っててね」


 私は魔法でカメラをポンと出した。そしてピントを合わせた後パシャっとシャッターを切る。出来たフィルムをさっそくフェンに渡して現像してもらう。


 出来た写真を女の子に見せるととても驚いていた。


「これ誰? 私?」


「どう? すごいでしょう」


「うん。すごい」


「そうやって私は珍しい生き物の写真を集めているんだ」


 私は過去に撮ったグリフォンなどの写真を見せた。


「もしよければこれまでの旅の話をしましょうか?」


 私はこれまでの冒険を声がかれるまで話した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る