寄り道

 私は二股山を目指してほうきで森の上を飛んでいる。まだ、遠くの空が赤く幻想的な景色が広がっている。


「フェン二股山が見えたら教えて。たぶん名前の通り山頂が二股に分かれているのでしょうけど」


「了解しました」


 フェンはほうきにぶら下がっている籠の中に入っている。顔をひょこっと出して可愛い。

 春の陽気と相まって今朝の風は気持ちいい。西には村も何もない野宿することになるだろう。そのための準備もしっかりしてきた。昨日は何も準備せずに行こうとしたが準備は大事だ。


「ふわぁ」


 やっぱり気持ちがいい。このまま寝てしまいそうだ。フェンが私の代わりに二股山を探してくれるしこのまま寝てしまってもいいかもしれない。………寝たら落ちるけど。


「ふわぁー。……寝ようかな?」


 本気で寝ようかどうか考えてた時、フェンから何か見つけたと報告が入った。フェンから言われた方向を見てみるとキャラバン隊だった。でも何か様子が変だ。やけに騒がしいというか、戦闘が起きている。


 盗賊か......。


 最近ここら辺で盗賊が出たと町のギルドに張り紙が出でいた。私は空飛ぶので関係ないと思っていたが、まさか盗賊に襲われているキャラバン隊に出くわすとは......。


 助けるか?


 見たところ私がかなわない事は無い。問題があるとすれば、寄り道になるということ。私としては一刻も早く目的地の滝まで行きたいところだが、見殺しにするのも嫌だし助けよう。私はフェンを肩に乗せ、ほうきをキャラバン隊の方に向ける。



 キャラバン隊は絶体絶命だった。護衛は壊滅状態、足も止められていた。そこに私は盗賊とキャラバン隊の間にほうきから飛び降りる。

 キャラバン隊、盗賊の双方キョトンとしている。まあ、急に魔女が問い降りて来たのだから当たり前と言だけど。はじめに再起したのは盗賊の方だった。


 「あの魔女を殺せ」と叫んでいる。魔法で攻撃してきている。攻撃力はそんなに高くない。


 こんな攻撃で魔法のエキスパートである魔女を倒そうとでも?

 私は全ての攻撃を受け止める。盗賊のリーダーであろう人がもう一度攻撃の命令する。


 だから、意味ないですよー。

 また私は全ての攻撃を受け止めた後、リーダーに向かって氷塊を飛ばす。氷塊は盗賊のリーダーの足元に着弾した。着弾した瞬間、リーダーの足元が氷つく。


 敵わないとさとったのか盗賊が散り散りなって逃げて行く。

 ふふん。相手が悪かったわね。


 逃げ遅れたか、意地を張って残ったか、数人追いかけようとした私の前に立ち塞がる。


 運が無かったですね。

 

「ふぁいあ」


 私は石弾を作り残った盗賊に飛ばす。飛んでいった石弾は肩や腰に命中する。これで盗賊は戦闘ができなくなる。私は逃げて行った盗賊を見ながら「いい仕事した」と伸びをする。


「ほっほっほ。余裕ですね」


「エ、エウアドネ様。追いかけなくても大丈夫なんですか?」


「え? ダメだけど」


 よくよく考えてみると逃げた盗賊がまた襲ってくるかもしれない。でも大変だし、まあいっか。


「また襲ってくるかもしれないなら私がキャラバン隊の護衛をすればいいでしょう」


「それだと滝までだいぶ寄り道することになりそうですが」


 あ、そうだった。私がキャラバン隊の護衛をしたら、当たり前だがほうきよりも速度が遅くなってしまう。


「うー。もー、フェン。それを先に行ってくれないかなー」


「知りませんよ………。エウアドネ様の自業自得でしょう」


 ひどいです。いつからそんなに反抗的に⁉

 

 フェンと変なやり取りをしていると、キャラバン隊の代表らしき人が駆け寄ってきた。


「助けてくださいありがとうございます。お礼はお金では何でもしますから」


「では………お金を……………」


「エウアドネ様」


 私がお金を要求しようとしたら、フェンが横からつつく。


「冗談です。夕食をご一緒できますか?」


「そんなんでいいんでしょうか? もちろん、嫌なわけじゃないのですが」


「いいんですよ」


 私は手をフリフリしてもういいよアピールをする。すると申し訳なさそうに馬車の車輪が壊れたので直してほしいと頼んできた。私にかかれば車輪の一個や千個……は言い過ぎかもしれませんが直すことなんて余裕です。


 車輪が壊れたという馬車は一番先頭だった。軸から曲がっていてとても修理できそうなものでもない。


「ひどいですね」


 私は折れた軸の先を杖でたたいた。たたいた断面から軸が伸びてきて車輪を形ずくった。


「すごい…直ってる」


 でしょ。でしょ。すごいでしょう。

 私は褒め言葉をご満悦まんえつだ。


「エウアドネ様。あまり調子に乗らないでくださいね」


 フェンから調子に乗らないように注意が飛んできた。その言葉に乗ってやらかした私に深く刺さった。


「努力は……しますから……………」


 今だけは勘弁してください。


 車輪を直した私は夕方になるのを待った。

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