第13話(カインサイド)
僕にはテイトという双子の弟がいる。
テイトとは生まれた時からいつも一緒だった。小さい頃は本当に仲が良くて、2人で一つのような感覚だった。
それが段々変わって来たのは、物心つきはじめた頃。周りからの扱いに差が現れてからだ。
テイトには生まれつき右腕がない。生まれた時から一緒にいる僕にとってそれは#普通のこと__・__#だったけど、皆にとっては違ったらしい。
成長して、家族以外と接する機会が増えるにつれ、周りの大人達は僕ばかりを褒め、テイトを邪魔者扱いすることが増えた。
テイトは次第に敵意や侮蔑の視線を向けてくる他人に怯えるようになって、いつも僕の後ろに隠れていた。
僕がテイトを守らないと。そう思い始めた頃だった。
(正直、いつも僕の服の裾を掴んで後をついてくるテイトは凄く可愛かったんだけど・・・)
まるで親鳥の跡をついてくるアヒルのようだったその頃を思い出すと無性に懐かしくなる。
それに、テイトは他の人が当たり前にできることができなかった。タイを結ぶのも肉を切るのも、ピアノを弾くのも剣を握るのも。服を着替えるのだって一苦労だ。
「カイン、手伝って・・・」
そういって僕の袖を引っ張ってくるテイトにいつも「仕方ないな」なんて言いつつ頼られることが嬉しかった。
(ボタンをつけたまま服を着ようとして引っかかってた時なんて、すごく可愛かったな。)
「カイン・・・助けて・・・」
「今手が離せないからちょっと待ってね。」
そう言ってジタバタしているテイトをこっそり眺めていたのは秘密だ。
それなのに、テイトは次第に周りの目を気にしてか、僕に全く頼らなくなった。それどころか、僕が何かしてあげようとすると激しく嫌がるようになっていった。
お父様に「しばらくは放っておけ」と言われて、渋々距離を置く事にしたけど、その間はすごくつまらなくて、いつも今頃テイトは何をしてるんだろうと考えていた。
そんな日々が続いたある日。
同じ屋敷にいるというのに全く見かけないテイトを心配に思って、テイトの部屋へ訪ねてみた。すると、テイトは高熱を出して寝込んでいて、こんな時も頼ってくれないのかと悲しくなった。
しかも、しばらく見ないうちに態度が豹変していて、理解が追いつかない。まるで別人みたいだ。
前の弱々しい雰囲気は影を潜めたけど、代わりに少し危なっかしい空気を纏うようになった。
(昔はテイトのことなら何でもわかったのに・・・今は全然わからない・・・)
それがひどく悲しくて、テイトのことをよくわかっていないお父様の言葉なんか聞かなければ良かったと後悔した。
そんな中、遊びにやって来たレイとテイトが喧嘩をした。というよりレイがテイトに酷いことを言ったのだ。
そこまでならいつもと同じだけど、その後は違った。テイトは泣くでも言い返すでもなく諦めたように肩をすくめた。
それがなぜだかわからないけど無性に腹が立った。
・・・それで僕がレイを叱ったわけだけど、その時テイトに言われたセリフが今も心に刺さっている。
「それにカインだって、今まで俺が罪人扱いされてたって受け流してただろ。なんで今日に限ってそんなに怒るんだよ。」
言い訳かもしれないけど、今までは相手を叱るより泣きそうなテイトを慰める方を優先してたからだ。
でも、テイトはずっと僕も#そう__・__#思っているんだと感じてきたのかもしれない。
それに対して、悪いことをしてしまったという気持ちと、テイトは僕のことを何も分かってくれていなかったのだと責めるような気持ちがごちゃ混ぜになった。
(これからはそんな勘違いを起こさないように構い倒してやるんだから。)
「テイト、これからはいっぱい構いに行くから覚悟してね?」
そう言った時のテイトは、驚きと少しの怯えが混ざったような顔をしていて、久々に懐かしい顔が見れた気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます