第12話

その後、俺は書庫から適当な本を引っ張り出して物置で読み耽っていた。


自分の部屋とこの物置だけが、誰とも会わずに済む俺のお気に入りの場所だ。レイが帰るまで適当に時間を潰すつもりが、すっかり時間を忘れて夢中になっていたらしい。



「テイト?やっぱりここにいた。」


「カイン・・・」


「こんなに暗いとこで、ダメじゃないか。」


「・・・レイは帰ったか?」


「今何時だと思ってるの?とっくに帰ったよ。」


「それじゃ、俺も部屋に戻るとするか。」



気づけばかなり遅い時間になってたらしい。俺は服についた埃をはらって立ち上がる。


「ねえ、テイト。さっきのこと・・・テイトがそんな風に思ってたなんて・・・僕知らなくて・・・」


「俺が思ってたっていうか・・・#皆__・__#が思ってることだろ。」


「そんなことないよ!少なくとも僕は違う。」


そう言ってテイトは俺の左手を両手で包み込む。



「僕はもっとテイトに頼って欲しいし、思ってること何でも言って欲しいんだ。昔はそうだったじゃないか。」


「・・・俺はそれが嫌だった。」


「え?」


「お前に頼らないと何もできない自分が嫌だったんだ。だから、放置されるようになって清々してる。」


「テイト・・・」


「俺はもう1人でも大丈夫だから、放っておいてくれ。」


そう言ってカインの手を振り解こうとしたが、しっかり握られていて振り解けない。



「・・・嫌だ。」


「カイン・・・?」


「もう放って置いたりしない。」


「だから、俺は放っておかれる方が・・・」


「体のこととか、関係ないよ。僕は純粋にテイトに頼られたい。一時手のつけようがないくらい荒れてたからそっとしておいたけど、そのせいでこんな風に考えるようになっちゃうなんて・・・」



カインは片方で俺の手を掴んだままもう片方で俺を抱きしめた。こういうことをされるとずるいなぁと思ってしまう。


「こんなことになるならお父様の言うことなんか聞かずに構い倒せば良かった。僕はずっとテイトのことを想ってたのに・・・」


そう言うカインの手に力がこもる。


「カイン、もう離せって・・・」


「離したら逃げちゃいそうなんだもん。」


「逃げるって・・・」


まあ、離されたら速攻で部屋に戻るけど・・・


「昔は僕の後をついて来てくれてたのに、いつの間にか避けられるようになって・・・凄く寂しかったんだ。」


「それは・・・」


カインと一緒にいると、何かとカインと比較される。それが嫌で避けていたのだ。


「ほら、やっぱり。テイト、これからはいっぱい構いに行くから覚悟してね?」


カインは最後ににっこり笑って不穏な言葉を残して去っていった。

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