第2話
まあ、そもそも両親が夕食に現れない俺を気にも留めないのは一応理由があった。
まだ家族4人で夕食をとっていたある日、メニューに豪華なステーキがでた。
俺は片腕しかないからそれを上手く切ることができなくて四苦八苦していた。
「テイト、ほら貸して。切ってあげる。」
「・・・大丈夫だからいい。」
この頃既にカインに敵愾心を持っていた俺は、カインの申し出を突っぱねた。
「でも・・・テイトじゃ切れないでしょ?」
「切れるってば!」
カインが皿を引き寄せようとしたのを無理やり奪い返す。すると、勢いが余りすぎて料理をひっくり返してしまった。
それまで黙って俺たちを見ていた父がバン!!とテーブルを叩く。
「いい加減にしなさい!」
「あなた・・・」
母が心配そうな顔で父を見た。
「テイト、カインが親切にしてくれたのなんだその態度は!」
「だ、だって僕は自分で・・・」
「食べる気がないなら食べなくて結構。部屋に戻りなさい。」
父は俺の言葉を最後まで聞かずにドアを指さした。
「・・・・・・はい。」
「あっ、テイト・・・」
カインが申し訳なさそうに俺に声をかける。そんな同情が余計に気に障りつつ俺はグスッと涙ぐみながら食堂を出た。
「あいつが反省するまで食事は出さなくていい。」
閉じた扉の後ろから、父が執事にそう言っているのが聞こえる。
俺はとぼとぼと肩を落として奥まった場所にある自室へと戻った。
それからと言うもの、俺はずっと食事を用意されずに過ごしている。なぜって"反省するまで"とはどうしたらいいのかわからなかったからだ。
まあ、半ば意地にもなっていたのだが・・・
大抵は勝手にキッチンへ言って食べらるものを持ってきて部屋で食べている。
そんなわけで、いつからか俺が不在の夕食は家族にとって日常になって行った。
(僕、生まれてこない方が良かったのかな・・・)
いつも夕食の時間、俺はそんなことを考えていた。
きっと今頃食堂には、完成された仲睦まじい家族がいるのだろう。そこには自分の居場所など無いように思えた。
そうして、高熱にうなされている今現在に至ると言うわけだ。
(それにしても・・・)
ここは本当に身体障害者に厳しい国だな。
多分、貴族の生まれでなかったらとっくに道端でのたれ死んでただろう。
なんて言ったって、障害者を罪人のように見る国なのだ。仕事にもめったに就けないし、無条件に皆から嫌われる。
そう思うと、両親は俺を追い出さなかっただけ優しい方なのかもしれない。・・・この程度で優しいなどとは思いたくないが。
俺は朦朧とする意識の中で、こうなったら家の力を存分に活かして道楽息子になってやると決意した。
どうせ落ちる評判も失う期待もない。いつか追い出される可能性はあるが、それまで遊び呆けてやる。
そう考えたところで再び意識が途切れた。
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