第3話

「・・・テイト・・・テイト!」


俺を呼ぶ声で目が覚める。


薄ら瞼を開けると、カインの心配そうな顔が目の前にあった。


「なんで、ここに?」


カラカラの声でなんたか言葉を発すると、カインは辛そうな表情をしてカップを差し出した。


「ほら、水だよ。」


「・・・ありがとう。」


礼を言うと、カインは一瞬驚いた顔をして「えへへ」と笑った。


「もう、姿が見えないと思ってたらこんなことになってるなんて。どうして誰も呼ばなかったの?」


「・・・苦しくて動けなかったから。」


呼んだら誰か看病してくれたのかは謎だが。


「そっか・・・気づかなくてごめん。もう大丈夫そう?」


「まだ体が怠い・・・。」


「じゃあもう一度寝ようか。ここに居てあげるから、何か欲しいものがあったら言ってごらん?」


(#俺__テイト__#はカインを嫌っていたけど、カインは本当にいいやつなんだよな。)



まあその分自分の嫌なところが目立ってしまうから余計に嫌いになってしまったのだろうが。


「いい。カインも戻って。」


「でも・・・」


「大丈夫。・・・もう慣れてるし。」


体調が悪い時に看病してもらった記憶などない。それに、前世の記憶を取り戻した今となっては俺はいい大人だし、子供のカインに看病させるほどではない。


そう思ったのだが、カインは悲しそうに肩を落とした。


「わかった。また様子を見にくるから。」


そう言って出て行ったカインを目で追って、再び瞼を閉じる。




昔は俺とカインは同じ部屋で過ごしていた。でもあまりにも俺がカインに癇癪を起こすので、12歳の頃に部屋を移らされたらのだ。


そうして14歳となった今、俺は屋敷の片隅でひっそりと生きているだけの存在となっていた。



(まあ今となってはその方が自由に動けていいかもな。)


急に中身が変わったことにも気づかれにくいだろう。俺はそう考えることにした。


元の#俺__テイト__#の性格のせいか、なぜか思考が捻くれた方向に行きやすいみたいだ。これは気をつけないと・・・


そんなことを考えつつ寝返りを打つ。だいぶ熱は下がったようで、明日にはきっと良くなっているだろう。


そうしたら、さっそく好き勝手にやらせてもらおう。

 


好き勝手するにはまずお金が必要だな。両親はテイトに構うことはないが、予算は割いてくれているようで、必要な物は執事に頼めば購入してもらえた。



まあ、カインの所持品に比べれば圧倒的に数は少ないが。



そのお金をなんとか自由にできないだろうか。俺はそんなことを考えているうちに意識を手放した。

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