第5話 お世話係になった理由

「そもそも他にも幹部はいるのに、なんでお前がメインで世話を焼いてんだ?」

 怠惰のベルフェゴールが俺に聞いてきました。実はお世話係は自己申告制なのです。


 怠惰なんてついてますが、好色も司るこいつは子どもが8人もいて、更に奥さんが現在妊娠中なのです。

 好色を司る割に浮気はしません。


「カキリア様のお世話係りがまだ交代制だった頃、俺がカキリア様のお風呂当番だったことがあったでしょう?」


「ああ。」

「早いうちに顔に水がかかるのに慣れたほうがいいって、聞いていたから……。」


「教えたな、そういや。」

「髪の毛を洗ったときに、シャワーで流してあげたんですけど……。」


「な、なにがおきたの?」

 当時赤ちゃんだった魔王カキリア様(ょうじょ)、シャワーの水が顔にかかって呆然。


 当然まだ話せなかったけど、表情で思ってることが丸わかりです。

 しかもこれ、何度やっても慣れなくて、


「な、なんてひどいことを。」

 って感じで毎回愕然としてる。

 可愛そうで可愛い。


 目に涙ためてうるうるしながら、

「いや……。

 信じられない。」


「──って表情で俺を見てきて、その時撃ち抜かれちゃったんだ。

 絶対俺が守ってやるって思って。」


「父性爆発してんじゃねーか。」

 怠惰のベルフェゴールが、あきれたような納得したような顔で俺を見てきました。


 俺は今日も今日とて、魔王カキリア様(ょうじょ)をお風呂に入れて、髪の毛を洗ってあげてシャワーで流していたら、突然魔王カキリア様(ょうじょ)が、裸のままお風呂から逃げ出しました。


「やーめーてー!

 たーすーけーてー!」

「カキリア様!誤解されます!」

 魔王様のお世話係りは大変です。

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