第3話 契約
俺が泣き止んだ所で、彼女は語りかけてきた。
「クロードは生きる意味がないと思ってる?」
「ああ。」
多少落ち着いたとはいえ俺はとても、生きる気にはなれていなかった。
「私はそんなことはないと思う。」
「でも、俺には…。」
「生きる意味が無い。…そんなことはない。貴方は本当に気掛かりなことが無い?」
「…。」
俺はそう言われて咄嗟にラビリンスのことを思い出した。もし、あいつが不幸を迎えるのだとしたら俺はきっと後悔する。お母様が死んだときもあいつが居なければきっと生きて行けなかった。
「あったわ、気掛かりなこと。」
俺は笑みを浮かべて答えた。
「うん。そう。」
そう言って彼女も微笑んだ。
「どうすれば、生き返ることができる。」
「私と契約を結ぶだけ。」
「じゃあ…」
「でもね。きっと辛い旅が待ってるし、私と契約したら多くの敵が現れるようになる。それでも契約する?」
きっと、ラビリンスが居なければ断っていただろう。ありがとう、ラビリンス。そしてお前を救いに行くわ。
「返事は…Yesだ。」
「そう。わかった。」
そう答えると彼女が手の甲の上に手を乗せてきて、
「
と呟いた。その瞬間、手の甲から声にならない程の痛みが押し寄せてきた。表すと手の甲に刃物を奥まで入れられたような痛みだ。
「アッッッ、、、ガッッッァァ!」
「辛いだろうけど頑張って。」
段々慣れて来てもう大丈夫だろう。と思ったとき今度は心臓付近にこれまでとは比べものにならないぐらいの痛みが襲ってきた。最早、痛いという感覚を超越している。
「グッッッァァァァ、ガァァァァァ!!!」
「…っ。」
それから何分立っただろうか、もう感覚が無い消失しているなか、急激に足元が覚束なくなり急激な眠気を覚えてきた。俺は彼女を最後に一目見てから眠りについた。
○
ナーバス家とは領地が近くでラビリンスとよく一緒に遊んでいた。ラビリンスは基本的に大人しかったが、たまに好奇心旺盛な部分を発揮することもあったり、よく自分とも手合わせや魔術訓練などもしてくれた。
そんな訓練ばっかしていたこともあって、
二人とも【天才】・【神童】などと呼ばれていた。
「クロード、来たよ!」
「よお、ラビィ、早速魔術訓練やるか。」
「うん、いいね!」
ラビィは適正が発覚する前から光属性を操ることが出来ていて、俺も実は羨ましがっていた。
で、魔術訓練はどんなことをやるかというと無属性魔法を打ちまくったり、
「ラビィ。行くぞ!」
「
俺は真っ直ぐに弾を飛ばした。
「じゃあ、
それを防がれる。
「まだまだ、
俺は一気に3つもの魔弾を上、右、左に発射した。普通の兵士でもこれを防ぎきることは難しい。しかし、ラビィは…
「
そう唱えて見事に盾の中心に当てて防ぎきることができる。これは並大抵の大人では難しいことだ。それをできるラビィはやはり天才だった。
「やっぱ凄いな、ラビィは。」
「ふふっ。そっちも大分凄いけどね。」
「じゃあ、ちょっと本気だすからな。」
「わかった。受け止めてみせる。」
そう言って俺は、手の平に魔力を集中させた。
「…っ。大分本気だね。」
周りの地面が揺れだし、小石が散った。
「行くぞ!、魔…」
「やめなさい!!」
そう言って出てきたのは、ラビリンスのお母様だった。
「「すいません。」」
俺らは一緒に1時間に及ぶ説教を受けた。
もう2度と魔術訓練で本気を出さないと心に誓った日でもあった。
~
「今日は疲れたね。」
「うん、そうだね。」
この日はいつもより、激しい訓練をしていて身体により倦怠感が渦巻いていた。
「なあ、ラビィ。」
「ん?なに?」
「この国ってどうなってんだろうな。」
「どうなってるって幸せに暮らしてるんじゃないのかな?」
「いや、たぶんどっかで苦しんでる人はいると思う。だからこの国にはスラム街って地域が存在してる。」
「…うん、そうだね。」
「だからさ、いつかこの国軍に入って、そんな人達を助けたい。」
「私もそうかも。」
「じゃあ、お互い頑張ろうぜ!」
「うん!」
夕日が俺らを応援するように輝いていた。今思えばそうではなかったのかもしれないが。
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