第2話 出会い

 その後、俺は宿屋に行き、宿に泊まろうと思い近くの街に向かっていった。

 幸い追い出された協会のすぐ近くにあったため、街に入ろうとして門番に検査を行ってもらおうとした。

 しかし、そう現実は甘くはなかった。


「パスポートを出してください。」


「はい。」


 そう言って2年前に親から貰ったパスポートを出した。

 そうすると、門番は、

「すまないね、坊や。このパスポートは期限が切れてるね。」


「え?」


「そうそう、たぶんついさっきかな。だから更新してからきてね。」


「ちょっと、待ってくれないか。どうにか入ることはできない…」


「できないね。はやく退きな。」


 俺はなんとしても街に入りたくて門番に説明しようとした。


「事情があって…」


「うるせぇな。退けや!!」


 そう言われ俺の話も聞かずに門番に肩を押された。


 ○


 そうして、俺は、門番に取っ払われてから、森を進んでいった。

 時には、村や街を見つけて入ろうとするも、村長に怪しいと言われ、入れて貰えなかったり、街に行ってももちろん、門前払いされて、もう2日も歩いている。


 もちろん、大した物も食っていなくて、たまに落ちている肉や野菜などを食べてなんとか生きていた。


 もう日は沈み出していた。

 そして、森の奥深くに行ったのか一向に村も街も出てこなくなった。


 そういえば、何でこんな目に会ったんだろうな。俺は別に間違ったことはしていないし、唯、自分の信じた道を歩んできただけなのにな。


 なんか、そう思うと泣けてきたな。。。


 糞がよ…。クソがっ…っっ。。。


 俺は溢れ出る涙を拭いながら森の中を進んでいった。


 ○


 もう、泣き疲れたのか涙は出てこなくなった。

 もう足腰に力が入らない、お腹もずっと鳴いている。

 助けて、助けて、助けてくれ。。。

 助けてくれよ!!!!、……。


 そんなとき物音がなった。


 ガサッ……。


「もしかして、誰かいる…」


 振り返るとそこには3体のゴブリンがいた。

ゴブリン…普通だったら倒せる敵だろう。しかし身体中の全ての力が入らない今、勝てる可能性がある筈も無かった。


「キャキャァ!!」


「くっ…。」


 ゴブリンは俺を見つけた瞬間に襲ってきた。しかも、俺は武器を何一つとして所持していない。


「仕方ない!、ウォール


 ウォールとは無属性魔法の一種で相手の攻撃を防ぐのに使われる。しかし、まともな魔法の訓練を受けていないせいか、5秒程度しか持たなかった。


 バリンッ。


 そう音を立ててウォールが割れた。


「ウキャキャァ!」


 そうゴブリンが奇声を発して、棍棒を腹に叩きつけた。


「グアッッッ!!」


 叩きつけられた俺はだらしない地面に背中からついた。


 今の一撃で肺をやった。もう呼吸することすらままらない。


 もう、疲れたな…。ここまで頑張ってきたしな。ラビリンスには申し訳ないな。まあ、こんな俺とより他のやつと過ごしてくれ。。。


 そして、目を瞑ろうとしたとき目の前に古ぼけた小屋があるのを見つけた。見つけたときには最後の馬鹿力を振り絞り衝動的にそっちに走って向かっていた。

 まるで何かに導かれるように。


 中に入ると部屋の真ん中に不自然に浮いている紫色のオーラを放った魔方陣の絵が書かれている本があった。

 小屋の中は小さく、そこにあるのは魔方陣の絵が書かれた本しかない。


 真ん中に近づいたとき、触っていないのに本が開いた。そこから急激に紫色のオーラが流れ出した。俺はそこで意識を失った。


 ○


「起きて…。」


 そう声がすると俺は目を覚ました。周りを見渡してみると謎に紫色のオーラに包まれていて目の前には、肌色が紫色でかなり露出の強いサキュバスのような女性が立っている。


「ここは私が作った精神世界。貴方は今、生死を彷徨っているの。」


「俺は…どうしたらいい。」


「どうしたら…いいって。どういうこと?」


「俺はこのまま死んだ方がいいのかと思ってな。自分は魔法適正すら無くって、追放されて存在する意味ももう無い。生き返ることができるって言ったってもうどうでもいいさ…。」


「…そう。」


「ああ…そうだよ。」


 どうせ俺なんて、生まれた価値すら無くって結局は唯の無駄に生まれてきた置物なんだ。

 だから追放されたし、どこに行ったって不運しか起きないんだ。


 ぎゅ…。


「え…。」


 そう音がすると、俺は目の前の女性に抱き締められていた。なんだが、とっても心地よい気分になってくる。


「頑張ったね。よしよし。」


 そう頭を撫でられ囁かれたとき、自然と自分の目頭から涙が零れ落ちてくる。


「君はかっこいいよ。ここまで諦めずに来たんだから。」


 俺はそう言われて喉奥で我慢していた嗚咽が溢れでてきた。


 ぐすっ…。ぐすっ…。


 彼女は俺が泣き止むまでずっと頭を撫で続けてくれた。

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