虚の輪 3 互いに似て
目の前にある、大ぶりのパンを差し出す小さな掌の匂いに、口の端を上げる。
やはり、親子だ。匂いも、パンを差し出す動作も、似ている。受け取ったパンを一口で飲み込んでから、ヤンは顔を上げ、『小さな人』である自分とは異なる『大きな人』の一人、ライの、左袖で光る七つの線に目を細めた。この線も、ライの父ヴィントと、同じもの。
その父が好んでいた場所に向かうのであろう、小柄なヤンの横を通り抜け、森の奥へと歩を進めるライの後を追う。
そういえば、ライに、ヴィントが好んで持って来ていたパンを焼く店のことを、まだ教えていなかった。口の中に残る小麦の味を思い返しながら、ヤンはもう一度、ライの、ヴィントに似た背を見上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。