二の輪 5

 うっすらと、目を開く。


〈皇王、陛下?〉


 薄暗い空間に映る澄んだ碧色の瞳に、ライは動かない首を傾げた。何故、しがない一つ輪の近衛騎士でしかないライが横たわる側に、偉大なる皇王であるレクトが? しかし疑問が口をついて出る前に、ライの身体は温かい腕に抱き締められた。


「良かった」


 ライの胸を、涙が濡らす。


 皇王陛下は、何故、泣いているのだろう? 再び、意識が途切れる前に、ライが感じたのは、底知れぬ違和感、だった。

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