第23話 それでも贖うしかない
チート殺し。
その勝利条件に顔を
一応の落ち着きを取り戻し、パーティーウィンドウを確認すれば、しっかりNPCがパーティーメンバーに加わっていた。
パーティー構成を見ると、
プリシア LV 75拳闘士 HP 1582 MP 891
クリスティーヌ LV 75魔法士 HP 1267 MP 1675
エンリクス LV 75聖騎士 HP 3264 MP 1376
エルミナ LV 75吟遊士 HP 1365 MP 356
ござる丸 LV 75武士 HP 1468 MP 147
セシリア LV 75魔法剣士 HP 1341 MP 1149
話にならない。
とてもじゃないがこのステータスでネーデルを撃破することは不可能だ。
このレベルは『エンファン』における当時の最高レベルで、死狂禁断縛鎖アマネシアのラスボス戦だったら申し分ない。
だが、ネーデルは違う。
こっちは『エンファンⅡ』のステータス仕様ではないと勝ち目はない。
大要塞バハムート・進撃編第4層攻略に必要なステータスは、
LV 50 IL110(アイテムレベルというのがある) タンク役以外のHP 5000程度
これぐらい必要なのに『エンファン』仕様のステータスでは絶望的だ。
そして
ちなみに盾役としてネーデルと相対する私にはあらゆる攻撃はまったく通用しないのだが、ネーデル自身とその眷属の攻撃ダメージ平均は3000~18000程度。
エンリクスでも一撃で昇天だ。
特にネーデルの攻撃は多彩で複雑で、例えヘイト1位のターゲットを維持していたとしても、ヘイト1位以外のパーティーメンバーに対してのランダム攻撃が有り過ぎて、実質、対処不可能系が多い。
私の回復魔法力も、相手の一撃で戦闘不能になってしまっては意味がない。
額に汗が滲んできた。
これほどまでのプレッシャーは初めてだった。
おそらくNPCに対ネーデル用のギミックを説明しても理解不能だろう。
単純に、戦術が複雑すぎて理解に時間がかかるのも一つ。
これは『エンファンⅡ』のプレイヤーでも、作戦を理解してその通りに動けるのは一握りの高プレイヤースキルを持った人間しか不可能な件。
多くのプレイヤーは長い練習時間をかけて身体で覚えるしかなった。
そして、もう一つ。
ゲームの特性上、戦闘風景を俯瞰で見られて、敵やパーティメンバーの動きが視覚的に分かりやすい状況で初めて、当時の攻略法が理解できるのだ。
今の状況は完全に、目の位置の視覚しか確保できない。
これが普通なのだが『エンファンⅡ』のゲームで、この視点は自殺行為だ。
自分の背後が一切見られないことがどれほど不利なのか、パーティー全体を盾役お及び回復役で把握できないのがこんなにも厳しいのか、この勝利条件の上では大変な重圧である。
私はもう一度背後を振り返る。
みんな、不安と絶望が入り交じった表情を浮かべていた。
ネーデルの禍々しさに気圧されているのだろうか。
「…………コイツが、アマネシアか」
俺っ子プリシアがぽつりと言うが、ゴメン、そいつはネーデルっていうエレウテリア世界の狂人なんだよ、アース=レンドのアマネシアじゃないんよ……。
多分、私が異世界転生でかつてプレイしてた『エンファン』に入り込み、浮かれまくった影響でこんなことになってしまったに違いない。
――――ならば。
ここで私が完璧に仕事をこなさなければならない。
ゲームは…………
遊びではないのだ!!!!
そして静かに膝を曲げて祈りのポーズ、つまりヒーリングを開始する。
HPやMPは幾らあってもいい。
特にこの状況下では支援、補助魔法を多用する。
MPは幾らでも欲しい。
その間に、絶望的な戦闘を少しでもマシにする為のスキルアクションを編成する。
インフレチート特性をフル活用して『エンファン』と『エンファンⅡ』両方のスキルを、本来ならそのクラスでしか使えないスキル達を、視覚一杯にアイコンとして配置した。
これが『エンファンⅡ』における
プレイヤーがウィンドウ表示を自由に配置できるシステムで、わざわざ項目を選択することなくスキルやアイテムを使用できる。
これらすべてをパーティー支援スキル、支援魔法、補助スキル、補助魔法、回復スキル、回復魔法、移動スキルと、攻撃以外で埋め尽くす。
また、『神々の御礼』により別のゲームスキルを次々と獲得し、スキルアイコンを配置していく。
――――時間はない。
なぜなら対アマネシア戦のプリシアの行動ルーチンは、しばらくすると勝手に戦闘をしてしまう仕様なので、限られた時間であらゆる要素を構築していく。
ネーデルのHPは793813。
65%まで削ると次の段階へ移行、3分後に複雑ギミック、47%まで削ると全体ダメージからの最終段階カオスギミック。
その後、戦闘開始から13分で回避不能の即死ギミックで戦闘はやり直し。
――――90秒経過、HPは6658184 MPは1267398
もはやネーデルを超えたバケモノハイパーインフレステータスになってしまったが、この勝利条件においてはMPのみが重要なのだ。
「震えが止まんねえけどさ、なんか不思議だぜ。アンタと一緒だと笑えながら勝てそうだ!」
プリシアが叫んでからネーデルに突っ込んでいく。
――――さあ
戦闘開始だ!
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