エンドファンタジア・ツヴァイ

第24話 NPCですよね？

　正直に言えば、やはり火力不足だった。

　ネーデルに対して与ダメージが3桁いくかいかないかで、むしろ3桁も出せるほうが驚きだったが、それでも次のフェーズまで時間がかかりすぎている。

　その間にどれほどの介護をしたか。

　基本的にどの攻撃でもワンパンで昇天してしまうので、

　サブクラスを学士にチェンジ

　野戦病院の陣(指定した箇所に被ダメ-10%の範囲バリアと継続回復)

　士気向上の策(対象の回復+回復分のバリアを張る)

　すぐに回復魔法士にクラスチェンジ

　フォアベアランス(自身と周囲30mのパーティーメンバー被ダメ-10％)

　タロット師にチェンジ

　運命の大輪(自身中心に被ダメ-10%)

　そして賢人にクラスチェンジ

　アグノス(自身と周囲15m小回復+回復分のバリアを張る)

　アレティ(自身と周囲15m中回復+被ダメ-10%)

　エギエネス(自身と周囲15m大回復+被ダメ-10%)

　ピズマ(自身と周囲15m中回復力+回復分のバリアを張る)

　と、連続変更で魔法連打。

　簡単に説明しているが、合間にネーデルの前方範囲攻撃や盾役に付与する爆発の範囲攻撃をメンバーに当てないよう位置取りし(NPCは場所取りを考えずにちょろちょろ動く)、もっとも厄介なスターダストという隕石攻撃の為に移動系スキルを駆使してメンバーを無理矢理動かして被害を抑えているこの忙しさ。

　――――禿げる

『エンファンⅡ』のヒーラー職は禿げると言われているが、

　意思疎通の出来ないNPCの介護でも禿げるわ！

　あらゆるダメージ軽減をしつつも効果時間がそれぞれ違うので、とにかく気を使う。

　もっとも自分自身がやられることはないし(安定のダメージ0、たまに1桁ほどのダメージはあるが勝手に回復する)、おまけに攻撃も制限されているので、実質的にはヒーラーの仕事だけしているようなものだが、移動処理ギミックが面倒だった。

　とはいえネーデルの攻撃ルーチンを思い出した今は対処に苦労しない。

　しかし、絶対的に火力が不足している。

　すでに戦士スキルの魂の叫び(PTメン攻撃力+15%)、拳闘士スキルの一騎当千(PTメン攻撃力+5％)、槍竜士スキルのエビセンタニー(PTメンクリティカル率10%上昇)に、攻撃速度上昇魔法(速度+15％上昇)を付与している。

　それでもHP 70万のネーデルを削りきるのに60分はかかりそうだった。

　もちろん、NPC達は必死な形相で攻撃を繰り返しているが、

　――――制限時間は13分なんだよな。

　13分経つと即死ギミックで最初からやり直しとなるだろう。

　じりじりと迫る時間を見ながらも、それでも徐々に削られるHPゲージを横目に、とにかくギミック処理＆回復補助支援と忙しく動く。

　心を無にし、ひたすらメンバーにかかっているバフの残り時間を管理する。

　ギミックのターゲットにされたメンバーを移動スキルで指定場所に動かして『庇う』のスキルを発動しダメージを肩代わり、即元の位置へと誘導し、同じ事を繰り返す。

　一体、どれぐらいの時間が経ったのだろう。

　気付けばネーデルのHPが65％まで削れていた！

　凄いぞおまいら！

　と、喜んでいる場合ではない。

　――――ここから更に忙しくなる。

　ネーデルがフィールド上空へ消え、三つの隕石がパーティーメンバーランダム対象でその上に降ってくる。

　これをそれぞれ指定の位置へと落とさなければならない。

　なぜなら今まで落ちたスターダストの隕石はフィールド上に存在していて(全部フィールド外周に等間隔に置いた)、その近くに落としてしまうと誘爆、壊滅的ダメージを食らう。

　どうやってもその説明をNPCに出来ないので、対象とされたNPCを移動スキルでなんとか引っ張るしかないなと思っていたら――――

　対象となったプリシア、クリスティーヌ、エンリクスが思い描く通りの動きをしてくれて見事に三つの隕石を中央の場所へ落としてくれた。

　――――天才かよ。

　だが、油断するのはまだ早い。

　すぐにダメージ軽減魔法を重複再展開する。

　三つの隕石がゴーレムに変化し、モンスターとしてフィールド上に出現した。

　こいつらはお互いを近付けると合体して手が付けられない強さになってしまうので、それぞれをメインタンク、サブタンク、他で三方向に引っ張って処理をしなければならない。

　これもNPCの特性を利用して(近くの敵を攻撃する)処理しようかと移動スキルの準備をしたら…………。

　――――奇跡が起きた。

　エンリクスが一匹を釣って離れ、もう一匹をプリシアがぶん殴り別方向へと引っ張ってフルボッコにしている。

　当然、もう一匹は私が釣っていて殴られるがダメージ0。

　いやいや、そーじゃなくて！

　こいつら以心伝心スキルでも持ってんの？

　何でNPCが処理の仕方知ってんだよ？

　ゲーム性崩壊しているぞ？

　いや、助かるけど。

　そうこうしているうちにゴーレム二匹を処理したPTメンが私を殴っているゴーレムを袋だたきにしてしまい、

　とうとうゴーレムフェーズを突破してしまった！

　どどどどどどういうことだってばよ！？