第22話 DPSさん火力出てないですよ
ハイエンドコンツ。
それは全オンラインゲーマーの
『エンドファンタジア・ツヴァイ・新生のエレウテリア』ではメインストーリー、あるいはメインシナリオをクリアした後に登場する高難易度ステージだ。
だがそこには、れっきとしたカースト制度が存在する。
それは――――
プレイヤースキルカーストだ。
ハイエンドコンテンツのボスには決まったルーチンが設定されており、そのタイムラインに沿って一定以上のダメージを与えないと、100%クリアできない仕様となっている。
例えばだ。
ハイエンドコンテンツのストーリー構成は4つに分かれており、各1層~4層それぞれにボスがいる。
更に、ボス1戦に付きウェーブが4つあるとして、そこに必ず存在するのがDPSチェックというプレイヤー殺しのシステムがカーストを決定づける。
DPSとはDamage Per Secondの略で、簡単に言うと1秒あたりに与えるダメージのことだ。
もう一つの意味は攻撃役クラスのことで、
で、だ。
私のクラスは聖騎士なので必然的にタンク役になる。
タンクの役目はボスの攻撃がパーティーに行かないのよう常にヘイトを維持、手痛い攻撃に対して的確に
だから…………
こっちは完璧にヘイト維持し、ギミックに対応しているというのにだ。
クソDPSがちっともDPSを出していないシーンによく遭遇する。
特に顕著なのが、ハイエンドコンテンツにも自動パーティーマッチングシステムがあって、それを利用すると、嫌でもクソDPSと組まされてしまう。
DPSの攻撃スキル回しが下手くそ過ぎてボスのHPが全然減らない、DPSが床に転がり過ぎて(要は戦闘不能)てへぺろにちなんで床ぺろという言葉が生まれ、しまいには床ぺろし過ぎてとうとうヒーラーまでもが蘇生させない(どうせすぐ転がるのでMPの無駄)というボイコットまで生まれてしまい、まだ良心が残るヒーラーは健気にも蘇生し頑張らせるが、ここでタンクも下手くそだと大ダメージばかりのぎりぎり回復、本来は避けられる攻撃に被弾してHPを減らすDPSへの回復と忙しすぎてヒーラーやると禿げるとまでとも言われるようになり、当然、そのパーティーはDPSチェックをクリアできなく全滅を繰り返し、戦犯扱いされたDPSは逃げるようにマッチングから離脱する。
それゆえに『エンファンⅡ』はギスギスオンラインと揶揄されてしまった。
だが、そう言われるのも無理はない。
どういう偶然か、たまたま下手くそなDPSがハイエンドコンテンツ4層目に現れることがある。
これはいわゆる『出荷』というものだ。
マッチングパーティーのメンバーが優秀過ぎて、本人は床に転がっているだけでクリアしてしまう例が稀に良くある。
そんなのとパーティーを組んでしまった日には、私の怒りは有頂天になる。
そして――――
あのバハムートを鉄拳で打ち砕いた瞬間――――
またそんな日が来るとは夢にも思わなかった。
視界一杯に表示さえたシステマチックな用語。
『大要塞バハムート・進撃編第4層』を開始します、との表示。
「どうして、こうなった…………」
蘇る記憶、熱く滾ってたあの頃の自分。
ここは円形状のフィールドで、周辺は煉獄に焼かれた亡者達が蠢く。
だがそこは触れてしまえば即死する壁。
目の前には――――
女の顔に鱗状の鎧、双対の巨大な翼。
まるでバハムートが擬人化したようなボスがいた。
「またお前に会うとはな……」
彼女の名前は『ネーデル』。
『エンファンⅡ』最初期のハイエンドコンテンツに登場した超絶難敵のボスだ。
幾度となく挑み、敗退し、でも、最後には勝利をもぎ取ったが、二度と戦いたくない相手だった。
なぜかって?
こいつ自身との戦いが嫌な訳じゃない。
一緒に戦うはずのパーティーの中に、予習復習もなくギミックも知らず火力も出せないメンバーが最悪の敵となるのが嫌なのだ。
そのDPSがいるせいでそのパーティーでクリアできない。
俗に言う、真の敵は足を引っ張る無能な味方、というやつだksg
私はくるりと振り返る。
後ろに控えているパーティーメンバー。
俺っ子プリシア、一万年生きているクリスティーヌとエンリクス、プリシアの親友『エルミナ』(初登場)、ござる丸(東国から来た武士)、そしてセシリアという
パーティーがNPCという時点で詰んでいた。
絶体、進撃4層のギミックに対処できない。
なお悪いことに表示された勝利条件を見ると、
1 味方の攻撃で
2 味方の戦闘不能や全滅をさせてはならない。
3 上記の1、2を満たしてクリアとなる。
『エンファンⅡ』プレイヤーは感情が高まった時に、こう叫ぶ。
「YOG・ SHIDAーーーーーーーーーーー!!!!!」
これ、絶体クリア不可能じゃん。
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